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冤罪を晴らした記録:「否認なら刑務所一直線だ」 名古屋市清掃談合の取り調べをノートに克明記録

「否認なら刑務所一直線だ」 名古屋市清掃談合の取り調べをノートに克明記録
(中日新聞 3/1付)

名古屋市発注の道路清掃事業談合をめぐり2003年、名古屋地検特捜部に逮捕された市緑政土木局の長崎弘元道路部長(59)が、08年の無罪確定後、初めて取材に応じた。部下や上司が容疑を認める中、ただ一人無罪主張を貫いた長崎さんは、取り調べの様子を克明にノートに残していた。「(認めなければ)2年半は接見なしで拘置所だ」。ノートからは、自白を執拗に迫る検事の姿が浮かぶ。


最高検は3月18日から特捜部の取り調べ過程の一部の録音・録画(可視化)を試行する方針だが、「当時の取り調べを知ってほしい」と長崎さんが明らかにしたノートの内容は、今後の可視化のあり方に一石を投じる可能性もある。

長崎さんは03年11月4日、当時緑政土木局長だった村瀬勝美さん(64)=無罪確定=とともに競売入札妨害容疑で逮捕され、当初から容疑を否認。同年12月26日の保釈まで、自白調書は一通も作成されず、長崎さんは41日間に及んだ調べの内容を大学ノート約130ページに記録していた。

逮捕から約1週間後の名古屋拘置所内の取調室。「部下は皆認めた。全部否認では刑務所へ一直線だ」と検事が迫った。その後も「(否認していた上司の)村瀬が認めた。一人でいろ」などと、孤立感をあおるようにたたみかけた。

きつい調べを受けたのは、弁護士の接見が認められない平日の夜や土日が多かった。

さらに「夜、もう調べはないかなと思っていたころに単独房のカギが開き、看守に『調べだ』と言われた。取調室に行くと単なる雑談で終わった」。こうして長崎さんは精神的に追い込まれていったという。

気持ちが大きく揺れ動いたのは、検事が退室し、立ち会い事務官と2人になった時だ。一度も話したことがなかった事務官が「おつらいでしょう。認めて公判でおっしゃったらいかがですか」と切り出した。

「家族や仕事など、いろいろなことが去来した。胸に染みた」と長崎さん。だが「信念を曲げて仕事をしてきたことは一切ない。心当たりのないことは言えない」と事務官に答えた。その後戻ってきた検事は「あなたは人生の選択を間違えた」と吐き捨てた。

公判では「長崎さんに予定価格のことなどを報告し、了承を受けた」とした部下の供述調書の信用性が否定され、長崎さんは一、二審とも無罪を言い渡された。検察側が上告を断念した08年12月に無罪が確定した。逮捕から既に5年が経過していた。

復職した今も長崎さんは納得できない思いを抱える。「当時の捜査、公判は一体何だったのか」

※名古屋市の道路清掃談合・・・2002年11月と03年4月に入札が行われた、名古屋市発注の道路清掃事業入札をめぐる談合事件。名古屋地検特捜部は03年、当時の市緑政土木局長村瀬勝美さん、部下で同局道路部長の長崎弘さんら市側の4人と業者11人を競売入札妨害罪などで、市議1人をあっせん収賄罪で起訴。長崎さんと公判で無罪を主張した村瀬さんは無罪、残る14人は有罪が確定した。長崎さんは08年12月に復職した。村瀬さんは定年退職後、昨年10月に取材に応じていた。

・・・自白を得るための取り調べは必要なのか?
被告人が疑われている犯罪について、その有罪・無罪を決めるのは、検察による取り調べではなく裁判官・弁護士・検察官による公判です。にもかかわらず、まだ取り調べの段階にある容疑者を精神的に追い込み、自白を無理矢理にはき出させることは、私刑(リンチ)にあたるのではないでしょうか。

検察が事件を一つの構図に載せて取り調べを行うことは、村木厚子さんに対する取り調べでも見られました。
事件がどういうものであったか、先に見通しを立てた方が分かり易く、取り調べも行いやすいのでしょう。しかし、仮にその構図にあてはまる自白を得られても、自白の信憑性を疑われれば崩れてしまうわけで、検察が描く構図通りの自白への執着は必ずしもプラスにはなりません。

容疑者を被告人にするに当たっては、検察に『訴因』を明確にする責任が求められるため、「構図ありき」「自白は吐かせるもの」という考え方を改めるのは難しいでしょう。ですが、せめて全面可視化により、遡及的な検証のできる状況を早く整えて方が良いように思われます。

長崎さんがノートに記録されていた11月8日の「思い出す時に、ないことを前提にしていたら何も思い出せない。あると思えば次第に記憶がはっきりしてくる」などという検察官の言葉は、まるで『記憶をねつ造してくれ』と言っているように聞こえるほどおかしなものです。客観的に見て異常な事態へ陥らないよう、取調室の密室化は回避されるべきものではないでしょうか?

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石巻3人殺傷、少年被告で初の死刑求刑 裁判員裁判 ・・・「姉が交際の邪魔」と言っていた事件

石巻3人殺傷 少年被告で初の死刑求刑 裁判員裁判
(MSN 11/19付)

元交際相手の姉や友人ら3人を殺傷したとして、殺人罪などに問われた石巻市の元解体工の少年(19)の裁判員裁判論告求刑公判が19日、仙台地裁(鈴木信行裁判長)で開かれ、検察側は「犯行態様や結果の重大性を考えれば、極刑を回避する特段の事情はない」として、死刑を求刑した。裁判員裁判の死刑求刑は4例目で、少年が被告では初めて。

検察側は2人殺害という結果の重大性や、少年が殺傷事件前の暴行事件で保護観察中だったことなどを考慮し「命で償わせることが正義にかなう」と主張。更正可能性はないと判断した。求刑の瞬間、少年はうつむいたまま、身動きすることはなかった。

検察側はこれまでに、元交際相手の少女(18)や、殺傷事件で重傷を負った男性(21)らへの証人尋問で、少年の凶暴性などを立証。少女は「交際中は、タバコを顔に押しつけられたり、殴る蹴るの暴行を何度も受けた。人を人と思っておらず、被告には極刑を望む」と涙声で強い処罰感情を吐露したほか、同じく検察側証人として出廷した共犯少年(18)は「犯行をすべて自分のせいにするように仕向けられた。被告と一緒にいたときが人生で一番つらい時期だった」と述べるなど、犯行態様の悪質さも浮き彫りになっていた。

一方、少年は被告人質問で「2人の命を奪って申し訳ない。一生をかけて償っていく」と謝罪。「(少女の)姉らに交際を邪魔されているという思いがあり、自分を見失った。最初から殺すつもりではなかった」と、計画性や事前の殺意を否定していた。

同日午前には、被害者の大森実可子さん=当時(18)=の父親が被害者参加人として出廷。「自らの命をもって償う気持ちはあるか」と問うと、少年は少し間を置いて「あります」と答えた。

裁判員らは今後の評議で、まず仙台家裁による検察官送致(逆送)の是非を判断。逆送を妥当とした場合は量刑を含む刑事処分の内容を決め、不当と判断した場合、保護処分相当として家裁に移送する。判決は25日午後に言い渡される予定。

起訴状によると、少年は2月10日早朝、同市清水町の元交際相手の少女(18)方で、少女の姉の南部美沙さん=当時(20)=と友人の大森実可子さん=同(18)=を牛刀で刺して殺害。男性1人に重傷を負わせ、少女を連れ去ったなどとしている。

南部美沙さん、大森実可子さん
逃げる間もなく無抵抗で40センチ刃物で刺され死亡

(読売新聞 2/11付)
少年らは10日午前6時40分頃、玄関から南部さん宅に侵入。大森さんと南部さん姉妹、知人男性と沙耶さんの娘の5人は、2階東側の1室に一緒に寝ていた

読売新聞によると宮城県石巻市清水町の南部かつみさん(46)宅で3人が死傷した事件で、死亡した長女美沙さん(20)と、知人で同市立女子商業高3年大森実可子さん(18)らの刺し傷がいずれも体の前部に集中し、傷が深いことが11日、県警への取材で分かった。

凶器の刃物は事前に用意され、全長約40センチもあったことも判明。石巻署捜査本部は抵抗したり、逃げたりする間もなく強い殺意を持って刺された可能性が高いとみており、同日、南部さん宅で現場検証した。

重傷を負った、姉妹の知人男性(20)は事件直後、次女沙耶さん(18)の元交際相手だった同市の解体工少年(18)(未成年者略取、監禁容疑で逮捕)に刺されたと県警に話していた。捜査本部は、少年から殺人容疑でも事情を聞く方針だ。一緒にいた同県東松島市の無職少年(17)(同)についても殺傷にかかわったか調べる。

発表によると、少年2人は10日午前6時40分頃、玄関から南部さん宅に侵入。大森さんと南部さん姉妹、知人男性と沙耶さんの娘(4か月)の5人は、2階東側の1室に一緒に寝ていたとみられる。

友人らによると、大森さんと知人男性は日頃から姉妹の相談を受けており、この日も相談にのるために居合わせたとみられる。

司法解剖の結果などから、美沙さんは左胸と左腹部に数か所、大森さんは腹部、知人男性は右胸にそれぞれ刺し傷を負っていた。

少年2人は、2階にいた沙耶さんを連れ出し、約6時間にわたり、知人から借りた乗用車2台を使い、石巻市や東松島市などを逃げ回った疑いが持たれており、10日午後1時過ぎ、石巻市内の知人宅を出たところを逮捕された。刃物はこの際、血痕が付いた状態で押収された。知人宅には少年2人と沙耶さんのほか、複数の知人が一緒にいたという。

一方、大森さんが通っていた石巻市立女子商業高校は11日、臨時学年集会を開き、3年生125人が黙とうをささげた。

・・・「姉が交際の邪魔」と言っていた事件
2人の方が殺害されているという事件結果は甚大。元交際相手の少女にストーカーのように付きまとい、その付きまといから少女を守ろうとしていた姉と友人を殺害するなど。事件に至るまでの経緯も非常に身勝手と断ぜざるを得ません。

被告人は「一生をかけて償っていく」と言っているようですが、一人の人が一生を懸けたとしても、償いきれる次元を超えてしまっています。

19歳にもなって殺人という罪の重さを測れない生い立ちは、犯罪学上の研究対象となり得るかもしれません。けれども、19歳とは「少年だから・・・」との情状酌量が通用する年齢でもないと考えます。

30年間服役したとして、49歳になったこの人物を日本社会は再び受け入れられるのか。大いに疑問です。

裁判員裁判で初の死刑判決 「控訴勧める」と裁判長 ・・・耳かき店員殺人事件は控訴すべきだった

裁判員裁判で初の死刑判決 「控訴勧める」と裁判長
(朝日新聞 11/16付)

東京・歌舞伎町のマージャン店経営者ら2人を殺害したなどとして、殺人や強盗殺人などの罪に問われた池田容之被告(32)の裁判員裁判で、横浜地裁(朝山芳史裁判長)は16日、求刑通り死刑判決を言い渡した。朝山裁判長は「犯行はあまりに残虐。更生の余地があるとも見られるが、極刑を回避する事情とは評価できない」と述べた。昨年5月に始まった裁判員制度での死刑判決は初めて。

弁護側は起訴内容を争わず、強盗殺人罪の法定刑である死刑と無期懲役のどちらを選択するかが争点だった。

判決は、「死刑が許される基準」として最高裁が1983年に示した「永山基準」をよりどころに検討。被害者とトラブルを抱えていた麻薬密輸組織の上役から殺害の依頼を受け、「自分の力を誇示するために引き受けた」などと、犯行の経緯はほぼ検察の主張に沿って認定した。

その上で、量刑理由の説明に入った。犯行に計画性を認めたうえ、被告の役割も「主導して最も重要な行為をしている」と認定。「被害者と全く面識もないのに、覚せい剤の利権を得たいという欲にかられた身勝手なもの」と犯行の悪質性を指摘した。

また、被告が命ごいする被害者を電動ノコギリで切りつけ、遺体を切断して捨てた殺害・遺棄方法について「最も残虐で恐怖や苦痛は想像を絶する。誠に残忍」と非難し、「酌量の余地がなければ、極刑を選択しなければならない」と述べた。

一方で、自首や反省など被告にとって有利な事情にも言及。「遺族の意見陳述を聞き、遅ればせながら罪の大きさを感じるなど内面の変化が見られる」と一定の評価をしたが、「犯行はあまりに残虐で非人間的」「自首も過大評価できない」と無期懲役を求めた弁護側の主張を退けた。

弁護側は、法廷で遺族の厳しい言葉に接した被告が反省や償いの姿勢を見せ始めたことを強調。「被告に人間性は残っている。わずかでも死刑をためらう気持ちがあれば死刑にしてはならない」と裁判員に訴えた。永山基準にも触れながら、「従来の量刑傾向にこだわらず、裁判員の良識、経験を」と求めていた。(太田泉生)

■裁判長「控訴勧める」と異例の呼びかけ

死刑の主文を言い渡した後、朝山裁判長は「判決は重大な結論となった。裁判所としては被告に控訴することを勧めたい」と、池田被告に異例の呼びかけをした。

・・・耳かき店員殺人事件は控訴すべきだった
日本国憲法は三審制(案件によっては二審)による裁判を予定しており、日本国民は地裁判決に不服があるときは高裁へ控訴、高裁判決に不服があるときは最高裁へ上告する権利があります。
これは、裁判は人が人を裁くものであり、一審判決で判断を誤る可能性を払拭できないことの担保。複数回の裁判を受けられるようにすることで、誤った判決に基づく刑罰や処分が行われないようにする法制度でもあります。

しかし、最高裁判所は、市民の司法参加である裁判員裁判を導入するにあたって、次のような報告書をまとめて裁判員制度裁判を経た裁判の控訴審を遠ざけています。

――裁判員制度、控訴審は一審尊重を 最高裁が報告書
(日経新聞 08/11/11付)
市民が刑事裁判に参加する裁判員制度の来年5月の実施に向け、最高裁司法研修所は11日、裁判員が加わった一審判決について、職業裁判官だけで審理する控訴審では「できる限り尊重すべきだ」などとする研究報告をまとめた。
国民の視点や常識が反映された一審の結論を覆す「破棄」は、一審判決が明らかに不合理な場合などに限るべきだとした。――

市民の司法参加を実現して根付かせるための配慮なのでしょうが、最高裁司法研修所という一機関が出すものとしては、三審制に抵触する行きすぎた内容です。さらに同報告書に、唯々諾々と従う各下級裁判所。
鮎滝は、この法曹界の現状を気色悪いと感じます。

裁判員裁判で死刑判決を出すことに関して裁判員を務めた方々の心労を考えるのであれば、死刑か無期懲役かを争った裁判員裁判で無期判決を出された裁判員の方々の心労も考えなければ平等性を欠きます。両者は、同じぐらい頭を悩ます事案であったはずです。

今回のマージャン店強盗殺人事件で、控訴審、言わば「刑法のセカンドオピニオン」を勧めるなら、先日の耳かき店員殺人事件でもセカンドオピニオンを勧めて然るべきだったのではないでしょうか?


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関連記事
検察、控訴を断念 無期懲役が確定へ 耳かき店員殺害
(産経新聞 11/13付)

東京都港区で昨年8月、耳かき店店員の江尻美保さん=当時(21)=と祖母の無職、鈴木芳江さん=同(78)=が殺害された事件で、殺人罪などに問われた元会社員、林貢二被告(42)に無期懲役を言い渡した東京地裁判決について、東京地検は12日、控訴しないことを決めた。

控訴期限は16日午前0時。弁護側も控訴しない方針で、検察側が初めて死刑を求刑した裁判員裁判は、無期懲役判決が確定する。検察側が死刑求刑し、無期懲役となった判決を控訴しないのは異例。

この事件では検察幹部が「誰が見ても死刑というわけではない」と語るなど、検察当局も死刑と無期懲役の境界線上にある難しいケースという認識だった。判決後、東京地検は東京高検などと協議をし、裁判官だけで審理する控訴審で、無期懲役判決を覆すのは困難と判断したもようだ。

林被告は起訴内容を認め、争点は量刑に絞られていたが、東京地裁は1日、「死刑を選択する余地がないか徹底的に議論したが、極刑がやむを得ないとの結論には至らなかった」として死刑を回避した。

強盗、強姦で満期56%が10年内再犯 ・・・耳かき殺人事件の判決を変えていたのでは

法務省:強盗、強姦で満期56%が10年内再犯
(読売新聞 11/12付)

法務省は12日、殺人や強盗など重大犯罪者の実態と処遇について初めて特集を組んだ2010年版「犯罪白書」を公表した。

それによると、強盗と強姦罪に問われ、満期釈放となった人のうち56%が、10年以内に再犯に及んでいる実態が明らかになった。

また、09年に検挙された人のうち、再犯者の占める割合が42.2%と13年連続で増加しており、再犯防止に向けた取り組みの重要性が改めて浮き彫りになった。

特集は、裁判員制度で重大犯罪の裁判に国民が参加することになったことを踏まえ、法務総合研究所が担当した。殺人、傷害致死、強盗、強姦、放火の五つの罪で2000年に出所した1021人を対象に記録を追跡した。それによると、強盗で服役した人、強姦で服役した人は、いずれも39%が出所後10年以内に何らかの罪に問われ、禁固以上の刑が確定していた。性犯罪の前科のある強姦罪の出所者のうち、38%は再び性犯罪を犯していた。

満期釈放者と仮釈放者の再犯率を比べると、仮釈放者の再犯率は、強盗罪で34%、強姦罪で32%だったのに対し、満期釈放者ではいずれも56%と大きく上回っていた。白書は「満期釈放者に対しても、保護観察による指導監督・援護の必要性が高い」としている。

・・・耳かき殺人事件の判決を変えていたのでは?
もしこの法務省による調査結果が耳かき殺人事件の公判前に知られていたのであれば、「何の落ち度もない2人もの被害者を殺害した被告人に無期懲役」という、あの判決は変わっていたのではないでしょうか?

大学で刑法ゼミにいた鮎滝は、ゼミの授業で女子刑務所の見学に行ったことがあります。懲役刑に服している人たちが収容されている施設でしたけれども、規律は感じたものの、殺伐とか緊張という印象はありませんでした。

刑務所の見学の最後に刑務官の方と話しをする機会があり、刑務所の印象を刑務官の方から聞かれたとき、「罰という印象は薄いと感た。しかし、懲役刑は自由を拘束する『自由刑』であるため、自由を拘束されている点で立派に刑罰だと思う」といった感想を話したように記憶しています。

服役囚が刑務所に入る刑事罰には『禁固刑』『懲役刑』の2つがありますが、前者は刑務所に収監することで住居の自由等を奪うというものであり、後者は刑務所に収監することで住居の自由等を奪うことに加えて、刑務所内で木工や洋裁といった一定の労働に従事させるというものです。
こうした概念を先に知っていたため、刑務所見学での感想になったわけです。

懲役刑とは何か? 法律で定められる刑罰
法律学には、刑事政策という研究分野があります。刑事政策とは、刑事法にまつわる諸政策を論じる学問で、犯罪の予防・対策に関して法律のあり方や、法律運営の実務を考える分野であり、犯罪者の矯正政策や犯罪被害者への支援政策などを含んでいます。

その中に、「懲役刑とは、何をもって“懲役”刑と言うのか?」という議論があります。

学問にもブームというのがあり、講義の内容もそれに合わせて変化するため、鮎滝が学生だった当時はそれほど深く立ち入らなかったように思います。
が、前述の刑務所見学の後、個人的には「いかなる行為が犯罪となるか、それにいかなる刑罰が科せられるかは既定の法律によってのみ定められるとする罪刑法定主義の観点から言えばあれが刑務所の姿だろう。でも、それが真なのか?」と考えました。それ故に、刑務官の方へ話した感想も、持って回った言いかたとなったわけです。

近代刑事法の基本原則である罪刑法定主義は、法律で定めれば刑罰は変えられるという概念でもあります。つまり、現状に対して懲役刑に過不足があるのであれば、「法律を改正するという正当な手続きによって、変えていって良い」わけです。

隔離・抑止・矯正を目的とする懲役
歴史的には、受刑者に穴を掘らせて、掘ったあとにそれを埋めさせて、再び穴を掘らせるという無意味な強制労働もあった懲役刑とは何か?

刑事政策の一般論として懲役刑は、犯罪者を一定期間社会から隔離することで社会の安寧を図り、被害者・被害者遺族による報復などから犯罪者を保護する『隔離』、長期間にわたって自由を奪うというペナルティーによって犯罪を割に合わないものとする『犯罪抑止』、強制労働という苦痛を与えることで再犯防止を図り、生活習慣などの健全化や職業訓練によって社会復帰に役立てる『矯正』で説明されています。

しかし、法務省による「満期釈放者の再犯率・56% 」という数字は、隔離はできていても矯正はできていないという実態を示していると考えれます。

犯罪者を矯正、社会復帰させる刑罰とは?
米国には、元ギャングであった受刑者の下に、若者たちが体験談を聞きに行くことで若者の非行を防止するという矯正プログラムを導入している自治体があります。受刑者は、自分の経験を話すことで自分の過去の過ちを整理し、再犯やギャングの道に戻ることの愚かしさを学びつつ、社会との接点を持つこと。若者たちはギャング・スターなどにはなれないこと、ギャングが派手な抗争や金回りの良い格好いいものではなく、簡単に抗争相手に殺されたり、仲間から裏切られたり、ボスから切り捨てられたりする現実を知ることを目的とする制度です。

また同じく米国には、受刑者が盲導犬を育てることで、社会貢献と動物をいたわり、一緒に過ごすことによって穏やかさを獲得させるという矯正プログラムを取り入れている自治体があります。

日本国も、旧来の木工作業や洋裁作業に限らず、様々な矯正プログラムを考える時機に来ているのではないでしょうか?
日本国でも盲導犬・介助犬は慢性的な不足状態にあるため、米国と同様の矯正プログラムを導入しても良いでしょう。高齢社会の日本国では、ドラマ『任侠ヘルパー』のように人への介護を学ぶという考え方もあって良いでしょう。また、後継者不足に頭を悩ませている最先端の金属加工技術を学ばせることで、服役後の社会復帰を円滑にして再犯防止に努めるという発想もあって良いように思います。

受刑者を一見すると優遇するような発想ですが、彼彼女らに2度と犯罪をさせない「社会の安全の対価」として、鮎滝は一考の余地があると考えています。

その上で、耳かき殺人事件を見返し、「社会は、本当にあの男を再び社会へ受け入れられるのかどうか?」と問い直した時、鮎滝は疑問符が付くように思います。


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関連記事
「刑務所、刑を務めるだけ」 再犯問題、服役38年男性
(朝日新聞 11/12付)

重大な犯罪で服役を終えた後、10年の間に約3割が再犯をしている実態が、法務省が発表した犯罪白書で明らかになった。「刑務所は字の通り、刑を務めるだけのところだった」。強盗殺人罪で無期懲役を受け、約38年服役して今年に出所した60歳代の男性はそう語り、再犯を防ぐ取り組みが足りないと指摘した。

法務省は「職業訓練などの取り組みには数の限りがある。刑務所ごとに受刑者の能力を見て対象者を決めるため、希望が必ずしもかなうわけではない」というが、この男性は「重大犯罪で長く服役しているほど、社会復帰のための職業訓練を刑務所に希望しても受けられないと感じた」と話す。

「何も身につかずに出て行く不安は大きい。服役中に失効した運転免許の学科試験だけでも受けられれば大きな自信になるのに・・・・・・」

男性は出所後に免許を取り直し、刑務所内で教誨師として出会った熊本市の牧師(51)の勧めで、今月10日にはホームヘルパー2級の資格も取得した。今は教会に住み込んで清掃や洗濯の仕事をしながら、介護施設などの就職先を探しており、自立するのが夢だという。

男性も服役して十数年間は、「規律を破ったとして懲罰を受け、けんかっ早く、心が腐っていた」という。だが懲罰を受けて座っているうちに、「このままでは自分の人生がダメになる」と思うようになった。夢中でお経を唱えている中で、家族や自分がした罪のことも考えられるようになったという。

長い服役中には、出所しても住居や仕事が定まらず、すぐに再犯をして刑務所に戻ってくる受刑者を何人も見た。「自分を認めて欲しいという気持ちや虚栄、優しさへの飢えがあったと思う。継続して話を聞けば、自分を見つめ直して、再犯しなくなる人も出てくる」

だが、刑務所内でそうした声を聞くプログラムは不十分だったと思う。男性が月1回、半年間の贖罪のための教育を受けたのは十数年前の1度きり。「教誨師の話を聞いたり、自分が被害者になったつもりで文章を書いたりすることは大事だった。中身の濃い内容を、継続してやらないと意味がない」と話す。

男性を見てきた牧師は言う。「社会で生きていくことにつながる職業訓練やカウンセリングで再犯が防止できれば、社会的コストの削減にもつながる。変えるところは、あとは社会の意識だ」(河原田慎一)

足利事件、菅家さんに再審無罪 「自由奪った」裁判長謝罪 ・・・真犯人は不明のまま

足利事件、菅家さんに再審無罪 「自由奪った」裁判長謝罪
(共同通信 3/26付)

栃木県足利市で1990年5月、4歳の女児が殺害された足利事件で無期懲役が確定、その後釈放された菅家利和さん(63)の再審判決公判が26日、宇都宮地裁で開かれ、佐藤正信裁判長は無罪を言い渡した。

佐藤裁判長は、判決理由を述べた後、「菅家さんの真実の声に十分に耳を傾けられず、17年半もの間、自由を奪う結果になったことを裁判官として申し訳なく思う」と異例の謝罪をした。

判決理由で佐藤裁判長は、有罪判決の証拠となった捜査段階のDNA鑑定について「証拠能力は認められない」と述べた。

最高裁によると、死刑や無期懲役が戦後に確定した重大事件の再審で、無罪が言い渡されたのは1989年の「島田事件」以来で6件目。

検察側は上訴権を放棄するとみられ、早ければ26日中にも無罪判決が確定する見通し。

審理は昨年10月から6回行われた。検察側は有罪立証をしなかったが、地裁は異例の証拠調べを実施。森川大司元検事(63)の取り調べを受けた際、菅家さんが事件を否認した後に再び“自白”する様子を録音したテープの再生や、元検事の証人尋問も行われ、取り調べの「可視化」に向けた議論にも影響を与えた。

すべて裁判官は、その良心に従う
日本国憲法は、裁判官の職権を次のように定めています。

日本国憲法・第76条
【司法権、裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立】
1 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

佐藤正信裁判長の菅家さんに頭を下げるという行動は、「その良心」に従ったものでしょう。DNAの不一致という揺るぎない証拠で菅家さんの無罪が確定した以上、佐藤裁判長の行動は、裁判所に何ら傷を付けるものではないと思います。むしろ、未だに菅家さんに対して非を詫びていない、当時の取調官、検察官、裁判官の方にこそ、不信感を覚えます。

・・・真犯人は不明のまま
さて、足利事件は菅家さんへの無罪判決で終わりではありません。もう一つ、17年半の重みが残っています。

足利事件の真犯人は、不明のままなのです。
足利事件はすでに時効を過ぎており、いま真犯人が見つかったところで、足利事件については罪を問えません。しかし、逃走中(すでに死亡しているかもしれませんが)の真犯人が、幼女を犯行対象とした事件を、足利事件一件きりで済ませているという保証はどこにもありません。ほとぼりが冷めた頃・・・

もう一つの17年半の重み。
当然、栃木県警だけで手に負えるものではないでしょう。けれども手を着けなければ、とんでもない逃走犯を抱えている可能性は、いつまでも払拭できずに残り続けます。

ネット経由で遺体診断「Ai情報センター」発足 ・・・「何でも“心不全”」に光を当てられるか?

ネット経由で遺体診断 「Ai情報センター」発足
(産経新聞 12/9付)

低い解剖率などが問題とされる死因究明制度を改善するため、コンピューター断層撮影(CT)で遺体内部の異状を調べる死亡時画像診断(Ai)の読影業務を、専門医がインターネット経由で請け負う「Ai情報センター」が9日発足した。
日本放射線科専門医会のメンバーらが財団法人として設立。解剖せずに体表観察だけで死因が決まり、誤った認定や犯罪見落としも生じているとの指摘がある中、Aiでスクリーニングし、不審な遺体を解剖に回すシステムの定着を目指す。

メンバーの山本正二千葉大学病院講師(放射線科)によると、遺体と生きている患者は画像診断のポイントが異なるが、遺体画像を読影できる知識や経験を持つ医師は国内に10人未満しかいない。センターに所属する読影専門医は、読影できる医師がいない医療機関からの要請により、メールのやりとりなどでCT画像を診断する。情報が漏れないようセキュリティーにも配慮するという。

山本講師は平成19年に千葉大学病院にAiセンターを設置、院内で亡くなった患者に対し原則的にAiを実施してきた。

外部の医療機関からも医療事故調査で読影を求められたり、子供の虐待事件で捜査機関から画像所見の鑑定書作成を依頼されたりすることなどが増加。中立性を保つために独立した第三者機関の設立準備を進めてきた。山本講師は「すべての遺体を解剖できない現状ではAiは重要な役割を果たす。医療機関だけでなく捜査機関にも活用してほしい」と呼び掛けている。費用は1万~5万円程度となる見通し。

「何でも“心不全”」に光を当てられるか?
日本では年間約100万人が死亡、うち8割は病院などで亡くなられていますが、残り2割は急死や事故といった変死です。
フィンランドのように変死体すべてを解剖する国もありますが、日本では「警察官が犯罪に巻き込まれた」と判断して司法解剖される以外は、ほとんど解剖されていないのが実情。警察庁によると、08年の1年間で変死体16万1838のうち解剖されたのは1万5716体で、解剖率は9.7%に止まっています。

では、解剖されなかった変死体はどのように扱われるのでしょうか? 変死体とはいえ、警察官が長年の経験を頼りに遺体を観察した結果、「事件性はない」と判断した遺体。多くは「心不全」として遺族へ引き渡されることになります。

いかにも死因らしく聞こえる「心不全」ですが、心臓の停止・呼吸の停止・瞳孔の散大の三兆候をもって「人の死」としている日本にとって、亡くなられた方の心臓が止まっているのは当然のこと。心不全という言葉は、亡くなられた結果を示していますが、「なぜ、心不全・心停止に至ったのか?」には答えていません。

警察官の経験を疑い出すときりがなくなります。が、力士・時太山の暴行死事件は、遺族が傷だらけの遺体を見て「けいこ中の体調不良で急死したというのはおかしい」と感じて、新潟大学医学部に行政解剖を要請して事件であることが判明しました。

人間同士が関わり合う社会だからこそ死因は重要
誰もが必ず最期の時を迎えるわけで、その死の経緯をのこされた遺族へ伝えられないのは、人間同士が関わり合って築いている社会においておかしいでしょう。

人間は万能ではありませんから、変死体をすべて解剖をしたとしても、体表面に変化が出なかった死因などを見落とすことはあるでしょう。しかし、確認は1回よりも2回、1人よりも2人で行った方が良いことは周知された経験則。裁かれる事件を見逃す可能性を下げさないよう、ごく平穏に暮らしている人たちの中へ殺人者が紛れ込ませないよう、亡くなられた方のために真相を明らかにするよう、解剖率を引き上げることは重要です。

もちろん、人口に対する解剖医人数や、解剖医の業務量における解剖へ費やすことのできる時間など、日本には日本のこれまで辿ってきた経緯があります。すぐに解剖率を20%や30%へ上げていくのは難しいでしょう。

そこを補う可能性をもっているのが画像診断(Ai)です。
これまで解剖医しか充てられなかった司法解剖へ画像診断医が加わることで、従来なら隠れていた事件を明らかにできるかもしれません。また画像診断は電子資料として残すことができるため、後日、検証を行うこともできます。

本当は、「日本国内で死亡した人は、もれなくすべて画像診断を実施。警察が必要と認めるときは画像診断医から情報提供を受け、また画像診断医が診断結果から必要と認めるとき警察へ通報する。さらに詳しい調べか必要なときは司法解剖を行う」という体制が組めると良いと考えますが、これがその最初の一歩となって欲しいと思います。


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関連記事
◆何でも「心不全」 日本は死因不明社会を脱せるか?(1) 今日の本:『チーム・バチスタの栄光』(08/01/23)
◆何でも「心不全」 日本は死因不明社会を脱せるか?(2) 今日の本:『死因不明社会』海道尊(08/01/23)
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裁判員対象起訴が大幅減少、検察“罪名落とし”か? 懲りないなぁ・・・“自称”法曹プロは

裁判員対象起訴が大幅減少、検察“罪名落とし”か
(共同通信 7/23付より)
裁判員制度の施行から2カ月間に起訴された裁判員裁判の対象事件は、計276件だったことが共同通信社の集計で分かりました。
月平均は138件ですが、これは過去5年の月平均起訴件数・258件を大幅に下回る数字。弁護士らは「検察が“裁判員裁判”を避けるため、強盗致傷を対象外の窃盗と傷害罪で起訴するなど“罪名落とし” をしている」と指摘しています。

共同通信の集計によると、裁判員制度が施行された5月21日から今月20日までに起訴された対象事件は、次の順。
(1)強盗致傷罪・・・・・・・・・・・68件(月平均34件)
(2)殺人罪・・・・・・・・・・・・・・・62件(同31件)
(3)現住建造物等放火罪・・・21件(同10・5件)
(4)強姦致死傷罪・・・・・・・・・17件(同8・5件)
(5)傷害致死罪・・・・・・・・・・・16件(同8件)

しかし、各罪状の過去5年の月平均起訴は強盗致傷が74.7件、殺人が53.2件、現住建造物等放火が25.5件、強姦致死傷が20.6件、傷害致死が16件。制度施行後の起訴件数は、過去の平均件数を大きく下回っており、半分以下の罪状まであります。

“罪名落とし”が疑われるケースとしては、例えば大分市で男が男性会社員をけって転倒させ軽傷を負わせた上、バッグを奪った事件。
同事件の捜査にあたった大分県警は、強盗致傷容疑にあたるとして検察へ送検しました。しかし、これを受けた大分地方検察は「暴行・脅迫の程度が強盗罪に問うほどまで達していない」として恐喝と傷害罪で、地方裁判所へ起訴しています。

また関東地方の弁護士によると、弁護人を務める被告は殺人未遂容疑で逮捕されたが、起訴段階では傷害罪とされました。この弁護士は「従来なら殺人未遂罪で起訴のはず。検察は慎重になっているが、被告には有利なので一概に悪いとも言えない。“罪名落とし”が多いという印象を持っている弁護士は多い」と話しています。

これに対し、検察幹部は「立証ができなくて罪名を落とすことはあっても、意図的にすることはない」と罪名落としを否定します。


懲りないなぁ・・・“自称”法曹プロは
日本の裁判員制度は、市民の司法参加から議論が始まりました。が、議論が深まったのは、裁判官、検察官、弁護士といった法曹プロたちの判決・活動への疑義、司法不信が高まってきたからです。

検察の求刑の8割という量刑相場があてはまる裁判官の判決。DNA鑑定など『科学的』というだけで証拠を鵜呑みにし、再鑑定をすることもなく有罪とした裁判官。日本国憲法を無視して、唯一の証拠が被告人の自白しかないのに有罪とする裁判官。
人権の名の下に、荒唐無稽な弁護を繰り広げたり、わざと被告人を心神喪失者に仕立て上げようとさえする弁護士。

さらに、検察官が起訴すれば99.9%有罪という異常な有罪率。検察審査会による「不起訴不当」「起訴相当」とした事件を、平然と不起訴としてきた検察官(5月施行の改正検察審査会法より、審査会が「起訴相当」を2回議決すると、自動的に起訴となるように改善)。

検察の机上で完結させられる“密室司法”
有罪率・99.9%ということは、裁判官、弁護人、傍聴人がいる公判ではなく、「検察官の机上」で実質的な裁きを完了させているということです。これで冤罪がゼロなら国民の納得も得られるでしょうが、高い有罪率を無実の被告人への脅しに使い、冤罪へ追い込む例が後を絶ちません。

そもそも検察官が「有罪を見込めるものに限って起訴する」ということ自体、密室裁判への歴史的反省から導き出された、日本国憲法・第82条「裁判公開の原則」に反する可能性があります。

裁判官が判決の言い渡し時に判決理由をあわせて朗読するように、検察官が不起訴処分とするなら、不起訴とする理由を広く公開する制度があっても良いはずです。そうした公正性を担保して初めて、「検察は不当起訴を生まないようにしているのだ」という検察官の意見にも説得力が出てくるでしょう。

法曹人に求められているのは、“完璧”ではなく“公正”
裁判は、法律の専門家ではあっても、いずれも完璧ではない人間がやる行為です。誤りがないわけがありません。だからこそ、公の場に出して、多くの人の目で監視ができるようにする必要があるわけです。
にもかかわらず、有罪率・99.9%という数字が一人歩きし、ただただ威圧的・権威的なものと成り果てた司法。

裁判員制度は、ようやくそこへ「市民の目」というメスを入れるべく整えられた制度です。それなのに、また始まった「検察官の机上」で済ませようとする“密室司法”。

強盗致傷罪が成立しなくとも即無罪とはならない
刑事訴訟法には「訴因変更」という手続きが定められています。

刑事訴訟法・第312条
裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
2.裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
3.裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更があつたときは、速やかに追加、撤回又は変更された部分を被告人に通知しなければならない。
4.裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。


つまり先述の大分市のひったくり犯についても、強盗致傷罪で起訴した後に、公判を通じて恐喝と傷害の併合罪が妥当となった場合、そのように変更することが認められているわけです。検察官が自身の机上で“罪名落とし”をやらなくとも、検察官は裁判という公の場で正々堂々と訴因変更し、被告人へ追及すべき責任を問えばよいのです。

市民を信じない検察には、当然、市民も反感を返します。検察が密室で“罪名落とし”をするようでは、市民と法曹界との隔たりは拡がるばかり。このようなこじれた市民と法曹の関係は、「公正な裁判を実施する」という公益にとって大きな障害となります。

検察には、強盗致傷罪の起訴件数が月平均74.4件から34件に減ったことなどについて、『秋霜烈日』を掲げるのに相応しい説明義務があるのではないでしょうか?

凶悪事件を対象に「時効廃止」、法務省勉強会が発表 訴求適用も視野、時効撤廃へ大きな一歩

凶悪事件を対象に「時効廃止」、法務省勉強会が発表
(毎日新聞 7/17付より)

森英介法相は17日の閣議後会見で、殺人など生命を奪った凶悪・重大な事件については、公訴時効の廃止が相当とする法務省内勉強会の検討結果を発表。「国民の正義観念が変化し、国家の刑罰権に期限を設けることは適当でない」としました。
法改正した場合、改正前に発生し、現在も時効が進行中の事件にもさかのぼって適用する「遡及適用」も憲法上許されるとの判断を示したものの、なお慎重に検討するとしています。

殺人など死刑が上限の罪については、05年の刑事訴訟法改正で公訴時効が15年から25年に延びましたが、時効廃止となれば、明治時代の旧刑事訴訟法(1890年制定)で時効制度ができて以来、初の抜本的な見直しとなります。法務省は早ければ今秋の「法制審議会(法相の諮問機関)」に、刑訴法改正案などを諮問する予定です。

検討結果では、国民の意識の中に「生命を奪った事件は他の犯罪とは質的に異なり、特別で厳正に対処すべきだという正義観念がある」と指摘しました。

生命を奪った事件は、特別で厳正に対処すべき
現行の時効制度は、
(1)処罰感情の希薄化
(2)犯人が一定期間処罰されていない「事実状態の尊重」
(3)証拠の散逸
を根拠としています。

これらについて森法相は、それぞれ「社会の処罰感情の希薄化という事情はもはや妥当ではない」「犯人を処罰して社会秩序の維持・回復を図ることを優越させるべきだ」「検察側に重い立証責任を負わせるが、起訴を断念するのは適当ではない」との反証を挙げて、制度の見直しの必要性を強調した。

時効制度廃止の対象は、「殺人など特に法定刑の重い重大な生命侵害犯」とし、傷害致死や危険運転致死など生命にかかわる罪も「均衡上、期間の見直しを行う必要がある」として延長を検討。一方で、捜査体制の維持や資料保管などの問題点も挙げ、今後十分な検討を要すると付記しました。

法改正前に発生した事件への遡及については、これまで遡及処罰の禁止を定めた憲法39条との兼ね合いが指摘されてきましたが、「実行時に適法であった行為を処罰したり、違法性の評価を変更して刑を重くするわけではない」として、「憲法上は許される」との見方を示しました。一方、05年の時効延長の改正時には遡及適用をしていない点との整合性から、政策上の是非をさらに検討するとのこと。

森法相の勉強会では、今年4月に次の4案を提示。
(1)時効の廃止
(2)期間の延長
(3)DNA型情報を被告として起訴する制度
(4)検察官の請求で時効を停止する制度

その後、被害者団体や学者、警察庁、日本弁護士連合会から意見を聴いたほか、国民からも意見募集。廃止と延長を組み合わせた結論に至ったとのこと。

世論に変化、薄くなった時効の存在理由
殺人事件の公訴時効を廃止するか、大幅な延長をするかは、人の寿命を考えれば実効性の意味で大きな違いはないと指摘されてきました。それでも法務省が廃止の方向へ大きく舵を切ったのは、被害者・遺族の思いに共感する世論の高まりが、時効の存在理由そのものを薄れさせたと判断したことが挙げられます。

しかし、時効を廃止した場合、捜査体制の維持や証拠物の保管など、捜査上のネックは大きい。事件発生から数十年を経た逮捕・起訴で公判が始まった場合、証言者の記憶があいまいになっていることも考えられ、検察側は重い立証責任を負うことになります。一方、被告側も、十分な反論を得ることが困難になると予想されます。

こういったハードルをどう克服していくか。遺族感情の尊重から始まった制度改正論議は、今後は学者や実務家を多数交えた法制審議会に場が移る。意義付けとともに、着地点へ向けた具体的な方策を明示することが求められます。

時効廃止へ一歩前進 問題は“ひき逃げ犯”
スクナビコナは、「殺人罪、強盗殺人罪、強姦殺人罪、内乱罪といった重罪」については、DNA情報データベースや20年前、30年前も振り返られるなどメディアをフル活用し、事件を風化させないようにして、時効は撤廃していくべきだろうと考えています。

捜査側の負担が危惧されているようですが、捜査に時期による段階を付ければ、運用は現実的に可能であろうと思われます。
例えば、最初は捜査本部を組織した“総力捜査”を行い、続いて他の事件との関係から人員を縮小しつつも専従班を編成して“専従捜査”を実施。専従捜査の期限は一定以上の検挙実績が見込める程度とし、その後は特定担当者を置いておく“継続捜査”へ切り替え。事件発生から最長・25年をもって未解決事件とし、米国のコールド・ケースのような専門部署が新証拠・新証言を得たときに動く“再捜査”とすれば、現状からの変更点はコールド・ケース専門部署の設置程度ではないでしょうか?

それよりもスクナビコナが最近、気にかかっているのは“ひき逃げ犯”の扱いです。
『警視庁24時』でしばしば報じられるように、交通死亡事故の多くはヘッドライトの破損片など物証が多く残ります。ですが、犯人がそのまま逃走手段とし得る自動車に乗っているため、逃亡・風化・時効を誘発しやすい案件でもあります。

被害者の死亡という甚大な損害を考えると、この案件に時効制度が適しているのか疑問を感じています。
回避が難しかった事故だったのか、飲酒運転のように文明の利器を無自覚に凶器とする無謀が生んだ犯行だったのか。被害者が死亡している場合、加害者を問い質す以外に真相をはっきりさせる方法がなく、法廷で明らかにした方が良ろしいように思います。


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関連記事
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実家である愛知県に戻ってきました。
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ブロガー名を、「鮎滝 渉」へ改めました。
私が自分に付けた最初のペンネーム。そして、「一角の者になるまでは使うまい」と思ってた名でもあります。

大して公知のペンネームというわけでもありません。が、1回目の中小企業診断士試験の失敗以降、あれこれと思い悩む中、「“輝かしい名としようする執着”はかえって醜い。そろそろ、この名を名乗る覚悟をしよう」と決意。鮎滝の名を使うことにしました。

ちなみに、旧ブロガー名は「スクナビコナ」。
日本神話に出てくる知恵の神様の名前です。恐れ多い名前ですが、ブログをする気構えとして、使っておりました。

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