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ISによる日本人人質事件を整理する(5) -湯川・後藤両氏の殺害-

湯川さん殺害か? ネット上に後藤さんとみられる画像 首相「許し難い暴挙だ」
(産経ニュース 15/1/25)
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に拘束された後藤健二さん(47)とみられる男性が、湯川遥菜(はるな)さん(42)は既に殺害されたとの声明を読み上げる画像がインターネット上に掲載された。安倍晋三首相は25日未明、関係閣僚会議の冒頭で「このようなテロ行為は言語道断の許し難い暴挙で、強い憤りを覚える。断固非難する」と述べた。これに先立ち、菅義偉官房長官は官邸で緊急の記者会見を行い、配信を確認するとともに「残る後藤氏に危害を加えないよう、直ちに解放するよう強く要求する」と強調した。

画像は日本時間の24日午後11時すぎに投稿。後藤さんとみられる男性は、首を切断されたように見える別の男性の写真を掲げ、英語で「仲間のハルナ・ユカワがイスラム国の土地で殺された写真」と説明。

声明で犯人グループは、後藤さんを解放する条件として従来の身代金要求を取り下げ、代わりに自爆テロの共謀罪で、ヨルダンで死刑判決を受け収監中のイラク人、サジダ・アル・リシャウィ死刑囚をヨルダン政府に釈放させるよう要求した。

これを受け、政府は25日午前1時すぎから関係閣僚会議を開催し、情報の収集、分析を進めるとともに、今後の対処方針について協議した。

菅氏は会見で西村泰彦内閣危機管理監と谷内正太郎国家安全保障局長に対し「関係省庁と連携して情報収集などしっかり対応するように」と指示したことを明らかにした。

イスラム国側は今月20日、身代金2億ドルを72時間以内に支払わなければ、湯川さんと後藤さんの2人を殺害すると警告するビデオ声明をネット上に公表。中東を歴訪していた安倍首相がイスラム国対策として表明した2億ドルの支援を殺害警告の理由にしていた。

これに日本政府は再三、資金拠出が非軍事の人道支援であることを強調し、人質の早期解放に向け、イスラム国側の態度の軟化を促してきた。同時に、首相は「わが国は決してテロに屈することはない。国際社会と手を携え、卑劣なテロとの戦いに万全を期す」との姿勢を強調していた。


期限切れを理由に、ISが湯川遥菜氏殺害
72時間の支払期限を経過しても日本政府が2億ドルを支払わなかったことを理由に、ISは湯川遥菜氏を殺害した。

2億ドル要求が通らないことでISが殺したのは、湯川氏だけであった。「ISは、交渉が決裂すれば必ず人質を殺す」という事実を見せつけ、残った後藤氏を人質として更に“取引”を続ける。湯川氏と後藤氏という二枚のカードを握っていたことを最大限に利用した、残虐で冷酷なやり方である。

念の為に指摘するが、ここで「湯川氏が殺されたのは、日本政府の所為だ」と政府批判をするのはお門違いである。身代金誘拐犯であるISが仕掛けた責任転嫁の論理に、まんまと乗せられている。

そもそも、湯川氏を不当に拘束し、湯川氏の生命を盾に不当に身代金を要求し、身代金が取れないと不当にも湯川氏を殺害したのは、すべてISの犯行である。湯川氏殺害は、ISが不当に不当を重ねた結果であり、その責任はISにある。湯川氏を拘束した後に思い直して解放する、身代金を要求した後に思い直して無条件で解放する、身代金は取れなかったが殺さない、これらの選択肢を常に握っていたのはISの方なのだから。

身代金2億ドルから一転、リシャウィ死刑囚の釈放要求
敢えて後藤健二氏を生かしたISが次に要求してきたのは、ヨルダンが収監しているサジダ・アル・リシャウィ死刑囚の釈放であった。

先の2億ドル要求も違和感のある“取引”であったが、今回のリシャウィ死刑囚釈放要求はそれ以上に違和感がある。

2億ドルは大金だが所詮はカネの話であり、実際に払うかどうかはともかく、少なくとも日本政府が払うと決めれば日本政府自身の手で用意できる。しかし今度は、ヨルダン、他国が収監している死刑囚を釈放しろと言う。日本政府が望んだところで、ヨルダン政府が拒否すれば頓挫する話であり、およそ“取引成立”を考えた要求ではない。

仮に“取引成立”を考えるのであれば、残る後藤氏を人質として、日本政府へ1億ドルの身代金を要求すれば良い。この方が素直であり、要求を迫られる日本政府もより真剣に考えられる。ISとの取引に応じなかった罪なり湯川氏を見捨てた罪なりをでっち上げて、後藤氏の身柄と併せて身代金2億ドルで据え置く論理だってあり得る。

これぐらいのことを考え付かないはずがないのに、ISは、敢えて日本政府とIS間の“取引”に第三国であるヨルダンを絡めてきた。日本から見れば、「何で、ヨルダン?」と疑問を抱かざるを得ない。

ISが画策した、IS・ヨルダン・日本の三角取引
ヨルダンとISの間には、日本人人質事件の以前からの懸案事項があった。IS空爆中にIS支配地域内に不時着し、ISに拘束されたヨルダン空軍のパイロット、ムアーズ・カサースベ中尉の身柄引き渡しである。

カサースベ中尉は昨年12月24日、対「イスラム国」の空爆作戦にF16戦闘機で参加中、シリア領内で墜落し、拘束された。 (朝日新聞 15/2/4より)

カサースベ中尉は昨年12月、ISISが「首都」と称するシリア北部ラッカ付近を米軍主導の有志連合が空爆した際、操縦していた戦闘機が墜落し、同機から脱出したところをISISに拘束されたとみられる。有志連合の戦闘に直接参加する兵士が人質となったのは、これが初めてだった。(CNN 15/2/4より)


ISは、カサースベ中尉の拘束を戦果として映像付きでアピールしており、ヨルダン政府もすぐに中尉がISに拘束されたことを公表している。当然、ヨルダン政府は、国の英雄である中尉を取り返すため、ISに捕虜交換を働きかけていたはずである。

2015年1月25日の時点で、ISは、ヨルダンが迫る捕虜交換と、日本が迫る人質解放と二つの交渉を抱えていたのだ。

しかし、前者はISの都合から先に進めることは出来ないし、後者も改めて身代金を要求したところで日本が払う可能性は薄い。このまま放っておいて、二つの交渉を共に決裂させるのも芸がない。そこでIS幹部は、「ならば、両者をまとめて解決すれば良い」と考えたわけだ。ヨルダンからリシャウィ死刑囚を出させて、ISは後藤氏を解放し、後は日本とヨルダンが勝手に何かを取引すれば、三角取引は成立である。

ISが見誤ったヨルダン政府の反応
だが、ISが画策した三角取引は早々と暗礁に乗り上げた。先にも触れたが、元から、ヨルダン政府が拒否すれば頓挫する話なのだ。

ヨルダン政府は、カサースベ中尉の解放に拘った。これは至極当然の話であって、ヨルダン政府が第一に考えるのはあくまでヨルダン国民の生命であり、ヨルダンが日本に好意的な国であると言っても、日本人の生命は二の次である。日本人の解放を望む日本政府は、ヨルダン政府の姿勢をどうこう言える立場にない。

この中尉の解放を重視するヨルダン政府の姿勢に困ったのは、IS幹部である。なぜなら、ISは、中尉を1月3日に殺してしまったからだ。

中尉は空爆作戦に参加していたパイロットであり、空爆で多くの同胞を失ったISにとしては許し難い敵兵士である。幹部の中には政治的に利用できると思っていた者も居ただろうが、末端の兵士は生きたまま中尉を解放することを許さなかったはずだ。

ヨルダン人パイロット焼殺か ISISが映像公開
(CNN.co.jp 15/2/4)
イスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」は3日、拘束していたヨルダン空軍パイロットを殺害したとする映像をインターネット上に公開した。

配信された映像と画像によると、ヨルダン空軍のムアーズ・カサースベ中尉はおりの中に閉じ込められ、生きたまま火をつけられて死亡したとみられる。CNNはこれらの放映を控えている。

映像の長さは22分間。冒頭でヨルダンのアブドラ国王を非難し、中尉殺害は国王の責任だと追及している。

ヨルダン軍の報道官は映像公開の直後、中尉は1月3日に「暗殺」されていたと述べた。


ISは、「分かり易い三角取引だろ?ヨルダンが欲しいものは日本から貰えよ」と勝手に思っていた。だからヨルダン政府を絡めたのだ。

しかし、受け手であるヨルダン政府は「ヨルダン対ISの取引だ」と真正面で捉え、日本は日本でヨルダン政府の立場を尊重した。だから、取引は詰んだのだ。ISは、ヨルダンで「中尉と後藤が帰ってくる」と期待の声が上がっては「リシャウィと交換するのは後藤だけだ」と正し、「中尉が生きている証拠を見せろ」と言われれば「リシャウィの釈放こそどうなってる」と返し、中尉の生存情報を不明瞭にしながら交渉を続ける状態に陥ってしまったのである。

ISはヨルダン政府の反応を見誤ったのである。

ISが見誤った後藤健二氏の妻
もう一つ、ISが見誤ったのは後藤健二氏の妻のメッセージだ。

後藤健二さんの妻が手記を公表「これは健二の最後のチャンスです」(全文)
(The Huffington Post 15/1/30)
フリージャーナリストとその家族を支援する国際団体「ローリー・ペック・トラスト」(本部・ロンドン)は1月29日、イスラム系過激派組織「イスラム国」(ISIL)に捕らえられているジャーナリスト後藤健二さんの妻の手記を公表した。

手記では、「イスラム国」からメールで、ヨルダン政府にリシャウィ死刑囚の釈放を求めるメッセージを送るよう求められたとしている。後藤さんが2人の幼い娘を残して、10月25日にシリアへ旅立ったこと、12月2日以降、「イスラム国」とメールでやりとりを続けてきた経緯などをつづり「ヨルダン政府と日本政府に、二人の運命が委ねられていることを理解して欲しい」と訴えている。

手記は英語で発表された(音声)。日本語訳の全文は以下の通り。
  ◇
私の名前はリンコ。シリアで武装グループに拘束されたジャーナリスト、後藤健二の妻です。彼は2014年10月25日に、私の元から離れました。それ以来、私は彼の解放のために舞台裏で休むことなく働き続けました。

私は今まで声を上げませんでした。というのも、健二の苦境に対するメディアの関心が世界中で騒ぎ立てられていることから、私は自分の子供と家族を守ろうとしたからです。

私たち夫婦には、2人のとても幼い娘たちがいます。私たちの赤ちゃんは健二が日本を離れた時には、わずか生後3週間でした。私は2歳の上の娘が再び父親に会えることを望んでいます。私は2人の娘が父のことを知りながら成長してもらいたいのです。

私の夫は善人で、正直な人間です。苦しむ人びとの困窮した様子を伝えようとシリアに行きました。健二は、湯川遥菜さんの居場所を見つけ出そうともしていたようです。私は遥菜さんが亡くなり、非常に悲しい思いをしました。私の思いは彼の家族とともにあります。家族の皆さんがどれだけつらい思いをされているか痛いほどわかるからです。

12月2日に、私は健二がトラブルに巻き込まれたことを知りました。健二を拘束したグループからメールを受け取ったときです。

1月20日、私は湯川遥菜さんと健二の身代金として2億ドルを要求する動画を見ました。それ以来、私とグループとの間でメールを何回かやりとりしました。私は、彼の命を救おうと戦ったのです。

これまでの20時間で、誘拐犯は私に最新の、そして最後の要求と見られる文章を送ってきました。

「リンコ、おまえはこのメッセージを世界のメディアに対して公開し、表に出さなければならない。でなければ、健二が次に殺されるだろう。29日の日没までにサジダ(・リシャウィ死刑囚)がトルコ国境付近にいなければ、ヨルダン人パイロットも即座に殺害する」

私は恐れています。これは健二の最後のチャンスです。健二の解放と、ヨルダン人パイロットの命を救うには、あと数時間しかありません。私はヨルダン政府と日本政府に、二人の運命が委ねられていることを理解して欲しいのです。

同時に、私は両政府の懸命の努力に感謝しています。ヨルダンと日本の人々から寄せられる同情にも感謝しています。私が若いころ、家族の拠点はヨルダンにありました。12歳になるまで、アンマンの学校に通っていました。だから、私にはヨルダンとヨルダンの人々に、特別な感情と、思い出があります。

最後に、私は家族と友人、健二の同僚にも感謝しています。この3カ月間、私と娘たちを支えてくれました。

私の夫と、ヨルダン人パイロット、カサースベさんの無事を祈っています。

リンコ


夫が無事に帰ってくることを願う後藤氏の妻の音声メッセージ。

もっと感情的に取り乱したものであれば、ヨルダン国民の同情心を煽り、ヨルダン国内に「リシャウィ死刑囚と後藤氏の捕虜交換を飲むべきではないか」という雰囲気を生み出していたかもしれない。しかし、後藤氏の妻の音声メッセージは、冷静な口調ながら切々と夫を返して欲しいという思いを伝えるもので、扇情的にならないよう努めたものだった。

それだけではない。後藤氏の妻はISから受け取ったメールに触れ、期限までにリシャウィ死刑囚が釈放されなければカサースベ中尉を殺すことになる、とISが言っていることを明らかにした。これを聞いたヨルダン国民は「まだ中尉は生きているはずだ」と考え、より一層、中尉の帰還に期待を寄せることになった。

さらに、後藤氏の妻はメッセージの最後に、「私の夫と、ヨルダン人パイロット、カサースベさんの無事を祈っています」と添えている。これでヨルダン政府の腹は決まったわけである。リシャウィ死刑囚と引き換えに、後藤氏とカサースベ中尉の2人を救うべきだと。

だからこそ、ヨルダン政府は強気に出た。カサースベ中尉の生存が確認できない以上は、リシャウィ死刑囚はヨルダンから移送できない、と表明したのだ。

後藤さん殺害したとする映像・・・ネットに投稿
(読売新聞 15/2/1)
イスラム過激派組織「イスラム国」は1日早朝、拘束中のジャーナリスト・後藤健二さん(47)を殺害したとするビデオ映像を、動画サイトに投稿した。

日本人2人の人質事件は、人質の映像公開から13日目で、悲劇的な結末を迎えた。イスラム国は、日本人をテロの標的にするとも宣言。安倍首相はテロを非難し、国際社会と連携して中東各国への支援を続ける考えを表明した。

 【アンマン=溝田拓士】映像は1分7秒で、1月31日午後10時頃(日本時間2月1日午前5時頃)に投稿された。イスラム国メンバーを名乗る黒ずくめの男が、左手にナイフを持って立ち、その横でオレンジ色の服を着た後藤さんとみられる男性がひざまずいている。

男は「日本政府に告ぐ」とした上で「安倍(首相)、勝ち目のない戦争に参加するお前の無謀な決断により、このナイフは健二を殺すだけでなく、どこであろうと日本人の虐殺をもたらし続けるだろう。日本の悪夢を始めよう」と脅迫。動画の最後に、後藤さんとみられる男性の遺体が映っている。

イスラム国傘下のラジオ局「バヤーン」は1日、「イスラム国は2人目の日本人の人質を殺害し、広報部門を通じて映像を公開した」と報じた。


結局、ISは、後藤氏を殺害しなければならない状況に追い込まれてしまったのだ。もちろん、リシャウィ死刑囚を取り戻すカードも失うことになる。カネも取れず、同胞も救えず、出来ることは「日本は我々ISの敵だ。覚悟しておけ」と脅し文句を言うことだけだった。

後藤氏を殺害したことで隠す必要はなくなったと判断したISは、カサースベ中尉の殺害も2月3日に公表した。そして、中尉が殺されていることを知ったヨルダンは、すぐさまリシャウィ死刑囚の死刑を執行した。

リシャウィ死刑囚らの刑執行・・・ヨルダン国営TV
(読売新聞 15/2/4)
 【アンマン=久保健一】イスラム過激派組織「イスラム国」は3日夜(日本時間4日未明)、拘束していたヨルダン空軍パイロットのムアズ・カサースベ氏(26)を殺害したとするビデオ映像を動画サイトに投稿した。

ヨルダン政府は、軍事的な報復を行う考えを表明。ヨルダンの国営テレビは4日、イスラム国が釈放を要求していたサジダ・リシャウィ死刑囚ら計2人の死刑が執行されたと報じた。ヨルダンとイスラム国の緊張関係がさらに高まる恐れが出てきた。

死刑が執行されたもう1人は、ジヤド・カルブーリ死刑囚で、イスラム国の前身「イラクのアル・カーイダ」の幹部だった。

国営テレビは3日、「政府はカサースベ氏が1月3日に殺害されたと確認した」と報じた。根拠は示されなかった。訪米中のアブドラ国王は3日、テレビ演説で「卑劣なテロだ」と非難した。

映像は22分34秒で、3日午後7時(同4日午前2時)頃にインターネット上に投稿された。オレンジ色の服を着て、おりの中に入れられたカサースベ氏とみられる男性が、体に火が付いて死亡する様子が映っている。映像の左上には、イスラム国の旗をかたどったロゴが示されている。

映像では、空爆などのイスラム国掃討作戦を展開する「有志連合」の一員であるヨルダンを、アラビア語で執拗に非難。空爆でイスラム国戦闘員が負傷したとする場面のほか、空爆参加国の国旗なども映像に盛り込んでおり、空爆の報復としての意味合いを示す狙いがあるとみられる。


四人の命を弄んだISの罪
およそまとまるはずもない2億ドルという身代金を公開要求した挙句に湯川遥菜氏を殺害。
取引をしたい自己都合のために、既に殺害していたムアーズ・カサースベ中尉を生きているように装う。
最初から成立困難な人質交換を持ちかけて失敗すると後藤健二氏を殺害。
カサースベ中尉の殺害を知らされたヨルダン政府に、サジダ・アル・リシャウィの死刑を執行させる。

結局、ISは四人の命を弄んだのだ。人間として許し難い悪行である。

四人としたのは、この数字には敢えてリシャウィ元死刑囚を含めるべきだと考えるからだ。

リシャウィ元死刑囚が死刑判決を受けたのは、06年9月21日のことである。10年10月4日時点で控訴中だったという報道があることから、八年半近く刑が執行されずに居たのは控訴していたからだ。敵に囚われているとはいえ、死刑判決を覆すチャンスを狙っていたリシャウィ元死刑囚にとって、今回の事件に巻き込まれたのはいい迷惑だったろう。捕虜交換で名前を挙げてもらうにしても、カサースベ中尉を殺した後で計画された、成立の望みのない捕虜交換では「敵に殺されろ」と言われたも同然である。

ISなら、「敵の手の中で苦しんでいたリシャウィを、殉教させることで解放した」とでも言い繕うのかもしれないが、それはリシャウィ元死刑囚を死なせる立場からの論理に過ぎない。リシャウィ元死刑囚にしてみれば、自分の与り知らぬところで進められた犯行に名指しで巻き込まれ、報復の最初のターゲットにされたのだ。凶悪犯罪をやろうとした犯人であっても、「こんなの堪ったものではない」と思うだろう。

しかも、人の命をここまでおもちゃにする連中が、理想のイスラム国家を作ると言うのだから、どうかしていると言わざるを得ない。ISは、自分たちの所業を顧みて、ISがやって来たこと、やっていることが、本当にムスリムの社会的地位を確立することに寄与すると考えているのだろうか。

(完)
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ISによる日本人人質事件を整理する(4) -2億ドル要求動画-(追記)

「イスラム国」か、日本人2人の殺害予告映像
(読売新聞 15/1/20)
【カイロ=溝田拓士】イスラム過激派組織「イスラム国」が公開したとみられるビデオ映像が20日、インターネット上に流れ、人質にとった日本人らしき男性2人について、日本政府に計2億ドル(約236億円)の身代金を要求し、72時間以内に支払わなければ2人を殺害すると警告した。

2人は、昨年8月にシリアでイスラム国に拘束された湯川遥菜(はるな)さん(42)(千葉市花見川区)と、ジャーナリストの後藤健二さん(47)(仙台市出身)の可能性が高い。映像に出てくる男は日本政府を批判しており、イスラム国だとすれば日本を初めて明確に標的にしたことになる。

英語で「日本政府と日本国民へのメッセージ」と題した映像は1分40秒で、アラビア語の字幕が付いている。目以外を黒衣で覆った男がナイフを持って立ち、その両側に湯川さんと後藤さんとみられる男性が後ろ手に縛られ、ひざまずいている。男に向かって右側の男性に「HARUNA YUKAWA」、左側の男性に「KENJI GOTO JOGO」の言葉がある。「JOGO」が何を意味するかは不明だ。

男は「日本の首相よ。お前はイスラム国に対する十字軍に進んで参加した。日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを支払うという愚かな決断をした。この2人を救うために2億ドル(の身代金)を支払う賢い選択を政府にさせるよう、日本国民が政府に圧力をかける猶予は72時間だ。さもなければ、このナイフがお前たちの悪夢となるだろう」などと警告している。

映像の左上には、イスラム国がこれまで米英の人質を殺害した時の映像と同じイスラム国の黒い旗のマークが出ている。人質に、キューバのグアンタナモ米軍基地に収容されたアフガニスタンやイラクの過激派と同じオレンジ色の囚人服を着せた手口なども同じだ。

冒頭には、テロ対策支援を表明する安倍首相の映像も流れた。中東歴訪中の安倍首相がイスラム国対応で避難民支援などに2億ドルの資金援助を表明したことを受けた報復とみられる。

安倍首相は20日、訪問先のイスラエルで記者会見し、「人命を盾にとって脅迫することは許し難いテロ行為で強い憤りを覚える。2人に危害を加えないよう、直ちに解放するよう、強く要求する」と非難した。

その上で、「今後も国際社会と連携し、地域の平和と安定のために一層貢献していく。この方針は揺るぎない方針であり、変えることはない」と断言。中山外務副大臣をヨルダンに急きょ派遣して情報収集を進めるほか、パレスチナ自治政府のアッバス議長とも協議して人質解放に全力を尽くす考えを示した。


動画での2億ドル要求は、身代金誘拐として詰んでいる
前々回の記事で、後藤健二氏解放については、後藤氏の妻を窓口として水面下で身代金交渉があったことに触れた。後藤氏の妻は相手側と約10通のメールをやりとりして、後藤さん本人の拘束が間違いないことを確認し、20億円の身代金を要求されていたのだ。

にも関わらず、ISは、安倍首相によるカイロスピーチを受ける形で、後藤氏・湯川氏を解放してほしければ2億ドルの身代金を用意しろ、という動画を上げた。
ナイフを持った黒尽くめの男を真ん中に、オレンジ色の囚人服を着せられた後藤氏と湯川氏を並べた画。ISから日本に向けられた初めての表立った犯行声明。そして、2億ドル(約235億円)という莫大な身代金要求。実にインパクトの大きい動画だった。

日本の首相よ。

お前は「イスラム国」から8500キロ以上も離れた所にいるのに、イスラム国に対する十字軍に進んで参加した。我々の女や子供を殺し、イスラム教徒の家を破壊するために誇らしげに1億ドルを提供したのだ。(後藤さんとみられる人にナイフを向けながら)よってこの日本人の命は1億ドルだ。さらにイスラム国の拡大を防ぐことを目的に、イスラム教を捨てた者たちの訓練費用に1億ドルを提供した。(湯川さんとみられる人にナイフを向けながら)よってこちらの日本人の命も1億ドルだ。

日本国民よ。日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを支払うという愚かな決断をした。この2人の国民を救うために2億ドル(の身代金)を支払う賢い選択を政府にさせるよう、日本国民が政府に圧力をかける猶予は72時間だ。さもなければ、このナイフがお前たちの悪夢となるだろう。

(「イスラム国」を名乗る組織の声明全文 読売新聞 15/1/20 より)


さて、ISによる声明を改めて示したわけだが、動画のインパクトの所為で、注意を払うべき幾つかのことを当時は見落としていたことに気づかされる。

まずは、「え?じゃあ、あの20億円は何だったの?」という話である。遅々として進んでいなかったとはいえ、ISは後藤氏の妻に身代金20億円を要求していたはずである。それを、一方的にご破産にして、一人あたり1億ドル(118億円)と6倍の身代金をふっかけてきている。昨日までと言っていることが違うのだ。

また、これまでの水面下交渉では後藤氏の妻という窓口があったのに、動画では日本の首相に対する呼びかけという形をとっている。「すると、ISと後藤氏の妻の間に出来ていた交渉ルートは放棄するのか?」との疑問が出てくる。放棄なら放棄で構わないが、それならそれで日本の安倍首相が、ISの誰と話を着ければいいのか指定しなければならないはずだ。

後藤氏の妻との交渉が、従来のISによる外国人誘拐の流れに乗っていたのに対して、この2億ドル要求は、金額が大きくなっただけではなく、日本の中東政策批判という政治的メッセージを絡めている。つまり、犯行の主旨が変化しているのだ。犯行の主旨が変わったということは、IS側の交渉責任者、後藤・湯川両氏の処遇を決める決定権者が変わった可能性だってある。だからこそ、交渉窓口について再確認が要るのだ。

さらに、世界中が閲覧できる動画で、ISは大々的に2億ドルという身代金を要求した訳だが、これは「2億ドルからびた一文まける気はない」という意思表示と解釈しなければならないのか、との疑問を生む。

仮に日本側が交渉を持った場合、後藤氏の妻との間で20億円で話を進めていたことを持ち出さない訳にはいかない。身代金誘拐にだって“相場”というのは存在するわけで、身代金の値下げ交渉は回避できないのだ。ところが、ISは、2億ドルという金額を世界に公表してしまった。ISが、交渉の破談を恐れて値下げした身代金を受け取るようなことになれば、日本に譲歩した弱腰と陰口を叩かれるだろう。

ISが行った、動画による身代金2億ドルの要求は、実にセンセーショナルであった。しかし、よくよく考えると身代金誘拐としては詰んでる動画に見えてくるのである。

身代金誘拐とは“取引”であり、交渉抜きには進まない犯罪
身代金誘拐とは、「人質を取ったぞ、返して欲しければカネを出せ」と言うだけでは完結しない類の犯罪である。

カネはどうやって払うのか? 現金受け渡しか、銀行送金か? 銀行送金は可能なのか? 現金なら円か、ドルか、むしろ金塊が希望だったりするのか? 現金の受け渡しの時機と場所は? 人質の引き渡し時機と場所は? ちゃんと人質は生きているのか? と多くの確認項目がある煩雑な“取引”なのだ。

誘拐犯はカネを取り損ねたくないし、誘拐被害者も多額のカネを払うからには確実に人質を取り戻したい。

確実な“取引”を実現するには、犯罪の加害者と被害者という関係ではあるものの、両者の間で一定の“取引相手としての信頼関係”を築く必要がある。お互いに言った言わないで揉めることなく、“取引”を円滑に進める為にも、一本化した交渉窓口で連絡を取り合うのは基本である。決して、動画なんかで、一方的に身代金を要求すれば進んでいく話ではない。双方向で、お互いに齟齬を生まない努力をした交渉が要るのだ。

身代金誘拐犯にとって、カネを取れずに人質を殺害する結末は、死体を増やしただけで何の利益にもならない。あくまでカネを取るための手段として人質を誘拐したのであり、人質とカネを交換する“取引”こそが達成すべき目的である。

2億ドルの“取引”をまとめる意欲を見せないIS
増して、今回の要求額は2億ドル(約236億円)である。2ドルを置くのではなく、100ドル札ならアタッシュケースにして200個分にもなる大金の“取引”である。ISは、年間で最大700億円の原油収入を得ていたと見られるが、その金額と比べてみても万全に万全を期すべき“取引”であるはずだ。

その“取引”に臨んだ日本政府は、あらゆるチャンネルを使ってISに呼び掛けをしたと言っている。いやいや、その状態はすでに異常である。お互いに交渉のパイプを特定できていないなど、およそ、2億ドルの“取引”をする体裁ではない。

日本がISとの間に交渉のパイプを持たないことは、IS側だって最初から自覚しているはずだ。だからこそ、真剣に2億ドルを取るつもりなら、双方で交渉窓口を決めることから手を着けるのが自然であろう。にも関わらず、ISがやったことは、動画を上げた後は72時間の期限切れを待つだけだったのだ。

人質となった二人が何処にいるかも掴めない日本が、ISで後藤・湯川両氏の処遇について決定権を持つ幹部に辿り着くよりも、IS幹部がヨルダンに派遣されてきた日本の中山外務副大臣に接触する方が、日本の外務省や首相官邸へ電話を入れる方が、はるかに容易なはずだ。容易であるはずなのにやらなかったのである。

このISが見せた、2億ドルの“取引”をまとめる意欲の低さこそ、この事件の肝心なところであったと思われる。

2億ドル要求動画は、日本の責任で交渉を決裂させる仕掛け
2億ドルに対する、このISの低い意欲の理由は何か?

それは、ISに端から2億ドルの“取引”をまとめる気がないと考えると説明がつく。

2億ドルという数字に大きな意味はなく、日本が「払う」と即答できない大金で、理由をこじつけられる金額であれば幾らでも良かったのだ。もし、安倍首相が10億ドル拠出すると言っていたなら、ISの要求額は10億ドルになっていただろうし、日本の拠出額が小さければ10倍にした金額をふっかけるなどしただろう。

このように考えてみると、72時間という支払期限の意味合いも変わってくる。後藤氏の身代金交渉において、日本政府は「テロリストとは交渉しない」の一点張りで、身代金を払うとも払わないとも言わなかった。金額を2億ドルにしても同様の流れになることは、容易に想像できる。だから、支払期限という交渉の終わりを作る必要があったのだ。

つまり、ISがやりたかったのは、日本政府との人質解放交渉を終わらせることだったのだ。それも、日本政府の責任となる形で決裂させるのが望ましい。ISは、「人質の交換条件に身代金2億ドルを日本政府に要求したが、日本政府が支払いを容認しないまま期限の72時間を経過し、人質解放交渉は日本政府のせいで決裂した。だから人質を殺す」というシナリオが欲しかったのである。

もちろん、間違って日本政府が2億ドルを支払おうとも、ISにとっては何も問題ない。

ISと交渉のパイプを持てない、後藤・湯川両氏が何処に居るかも特定できない。そんな八方塞がりの日本が二人を救うには、安倍首相が会見などで「2億ドルを支払うことにした。人質を返して欲しい」と言うぐらいしか手立ては無かっただろう。

しかし、安部首相にその選択肢は無かったと思う。テロに屈しない強いリーダーであることを選び、2億ドルを払うとは言わなかった。仮に払ってしまえば、有志連合によるISへの空爆も、地上戦でISと戦うクルド人やイラク治安部隊の兵士たちが流した血も、すべて無駄にしてしまうからだ。

(続く)

ISによる日本人人質事件を整理する(3) -安倍首相のスピーチ-

身代金交渉に乗り出すことが出来ない日本の立場
ISは、もっと早い時点で、交渉相手が後藤氏の妻から日本政府に移り、日本政府から20億円の身代金を引き出す見通しを立てていた。フランス人ジャーナリスト人質事件では、フランス政府からカネを引き出した実績もある。

ところが、日本政府は積極的に動かなかった。内部環境で見れば、安倍首相のテロリスト対応は小泉純一郎氏の強いリーダー像を踏襲しており、身代金交渉では積極的に動かなかったのだ。

かつて日本は、1977年、福田赳夫政権の時に起きたダッカ日航機ハイジャック事件では、「一人の生命は地球より重い」として、乗客乗員解放のために身代金600万ドルと犯人が求めた仲間の釈放に応じたことがある。しかし、2004年から05年、小泉政権の時に起きた三件のイラク日本人人質事件では、いずれも「テロリストとは交渉しない」との立場を採り、イラクからの自衛隊撤退を求める犯人の要求を拒否している(5名仲介の協力を得て解放、1名犯人により殺害)。

また外部環境から見ると、日本政府は動けなかった、と言っても良いだろう。

日本は米国の同盟国であるが、有志連合には参加しないという微妙な立場に居る。そんな日本が、ISに身代金を払うと言えないのである。IS空爆に参加しているフランスなら、自分たちが払ってしまった身代金の分だけIS弱体化に貢献することも可能だ。しかし、日本には、この自己矛盾を日本自身で解消する手立てはない。
逆に、払わないと明言し、日本側から交渉を決裂させることも出来ない。それは、日本政府が自国民を見殺しにすることになり、自民一強と言えども政権が吹っ飛んでしまう。

日本としては、交渉を長引かせて、ISから妥協案を引き出すしか手は無かったと言える。

イスラム法には、捕虜を解放する方法として恩赦の規定も存在するため、交渉の長期化=マイナスとは限らないのだ。もし、日本に外国で活動可能な邦人救出部隊でもあれば、交渉を長引かせながら作戦を決行する機会を伺い、身代金を払うことなく二人を実力行使で救出することも考えられただろうが、当然、今の日本にその選択肢はない。

進まない身代金交渉 安倍首相のスピーチ
一向に身代金交渉に乗り出してこない日本政府の対応は、ISにとって、不満が積もったことだろう。日本政府はテロに屈しないタフな交渉相手であろうとしたわけだが、ISには煮え切らない態度に見えたはずだ。

後藤氏を拘束してから年が改まり、ISとしても次の一手を考える必要が出てきた。

その最中に行われたのが、2015年1月、安部首相の中東歴訪である。

安倍総理大臣の中東政策スピーチ
(中庸が最善:活力に満ち安定した中東へ 新たなページめくる日本とエジプト)
2015年1月17日 於・日エジプト経済合同委員会
<前略>
イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。

イラクでは、全党派を含む、国民融和内閣による安定的な統治が絶対に必要です。日本は、そのための努力を支援し続けます。地域から暴力の芽を摘むには、たとえ時間がかかっても、民生を安定させ、中間層を育てる以外、早道はありません。「中庸が最善(ハイルル・ウムーリ・アウサトハー)」。日本はそこに、果たすべき大いなる役割があると考えています。
<後略>
→全文(外務省HP内)


安倍首相のスピーチを普通に読めば、ISから逃れた難民たちは着の身着のままで逃げてきた人も居るだろうし助けなければならないな、イラクに全ての党派が融和した政権ができるといいな、所得の中間層が増えれば現状への経済的不満は減るし暴力に訴えることも減るよな、と好意的に評価できるはずである。

しかし、「日本は敵国である」と決めたISはそう聞こえなかったし、そのように聞くつもりもなかった。

前回の記事で触れたが、ISは後藤氏の妻へ身代金を要求した時点で、既に日本を敵国にする腹を決めていたと思われる。
なぜなら、身代金交渉が不調に終われば後藤氏を殺すことになるからである。「自国民を殺されて憤りを覚えない国などない」というのは、ISにとって当然の感覚だ。もし、ISが日本を敵としないのであれば、20億円の身代金要求などやらずに後藤氏を解放すべきであるし、湯川氏も合わせて無条件で解放されなければおかしいのだ。

ISにとって、IS以外はすべて敵である。世界を黒と白に塗り分けるこの苛烈な二元論こそ、ISの基本姿勢であり、世俗との間で妥協する指導者たちに不満を持つ人々をISに引き付ける力となっている。

そんなISには、日本が、敵味方どっちつかずの立ち位置に居ることさえも気に入らない。曖昧さを排除するべく、ISは、日本の安部首相による演説を「日本によるIS敵対宣言」と読み替えさせる一手を打つことにした。それが、下に示す記事の2億ドル要求動画である。

ISは、局面を進めたのだ。

最早、安部首相がカイロでのスピーチでどう言い繕うかなど関係ない。どこかで揚げ足を取れればよく、揚げ足を取れなくても「ISが追放した連中に味方した」といちゃもんを付けられれば、ISとしては用が足りるのである。そしてISは、このスピーチから『ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します』という文言を発見し、「やはり、日本はISの敵だ」と決め付ける論理に利用した。

表現に工夫を加えたところで、世界中の誰からも文句をつけられないスピーチなど出来るはずがない。それも、既に日本を敵とみなしていたISが相手では不可能であったろう。

ISに付け入る隙を与えないようにするなら、ISに故郷を追われた難民がいるのに見て見ぬ振りをし、2億ドルの人道支援をやらないとするしかない。
しかしこれは、人道支援を前面に押し出してきた日本外交の基本から離れることになるし、戦災市民の窮状を訴えてきた後藤健二氏の思いからも離れてしまうだろう。後藤氏の思いを果たすには有志連合・IS双方の即時停戦こそ望ましいが、それが実現する期間も増え続ける難民を見捨てて良い訳ではない。

「イスラム国」日本人殺害警告=湯川さんら2人か-72時間以内、2億ドル要求
(時事通信 2015/01/20-21:57)
【エルサレム時事】シリア、イラクで勢力を拡大する過激組織「イスラム国」を名乗るグループが20日、湯川遥菜さん(42)=千葉市出身=とフリージャーナリストの後藤健二さん=仙台市出身、1967年生まれ=とみられる日本人2人を人質に取り、身代金2億ドル(約235億円)を72時間以内に支払わなければ殺害すると警告するビデオ声明をインターネット上に公表した。イスラム国による日本人殺害警告が確認されれば初めてとなる。

政府関係者は20日夜、ビデオ声明について「本物の可能性が高いとみている」と述べ、信ぴょう性は高いとの見方を示した。

殺害警告を受けて、安倍晋三首相は菅義偉官房長官に対し、事実関係の確認に全力を挙げるとともに、関係国と協力し、人命第一に対応するよう指示。安倍首相は訪問先のエルサレムで記者会見し、「人命を盾に脅迫することは許し難いテロ行為で、強い憤りを覚える。直ちに解放するよう強く要求する」と表明した。政府は首相官邸の危機管理センターに対策室を設置した。

イスラム国が投稿したとされるビデオ声明には、湯川さんらとみられる男性2人が写っており、オレンジ色の服を着て、砂漠で並んでひざまずかせられている。

声明は「(安倍首相が)イスラム国から8500キロ離れた場所から、進んで(イスラム教徒を攻撃する)十字軍に参加を約束した」と非難。要求している2億ドルの身代金について、「1人1億ドル」と主張した。

安倍首相は、17日にカイロで行った演説で、イスラム国対策としてイラクなどに2億ドル程度の支援を行うと表明しており、声明は支援額と同額の身代金を要求した。これに対し、安倍首相はエルサレムの会見で、2億ドル支援は「避難民が必要としている人道支援だ」と述べ、予定通り実施すると明言した。

湯川さんは「民間軍事会社」を設立。2014年7月28日にトルコから陸路でシリアに入国し、イスラム国と交戦している反体制武装組織の部隊に同行、8月12日から14日にかけ、イスラム国がシリア北部アレッポ近郊で激しい攻撃を仕掛けた際に部隊からはぐれ、拘束されたとみられている。

一方、後藤さんは映像通信会社を創設。14年10月、自身のツイッターを通じシリアで取材中と伝えた後、同月23日を最後にツイッターの更新が途絶えている。


「イスラム国」対策2億ドル内訳、食料配給など
(読売新聞 15/02/06)
政府がイスラム過激派組織「イスラム国」対策として、周辺国を支援するために拠出する2億ドルの内訳が5日、明らかになった。

食料など人道支援や難民への教育、行政への支援など、すべて非軍事で、今年度内に実行を予定している。

イラクやシリアの国内避難民や周辺国に逃れた難民に対する水・食料の配給、仮設住宅の整備などの人道支援が8割以上を占めた。残りは、避難民や難民に対する教育・職業訓練や、国境管理や法制度整備の支援などだった。

対象は6か国で、イラクが約9000万ドル、シリア約3300万ドル、ヨルダン約2800万ドル、レバノン約1820万ドル、トルコ約1630万ドル、エジプト約400万ドル。

さらに、広域にわたる難民支援などのため、約1120万ドルを国際機関に拠出する。2億ドルの拠出は、安倍首相が1月17日にエジプトで行った演説で表明した。


(続く)

ISによる日本人人質事件を整理する(2) -後藤健二氏拘束-

湯川氏拘束をきっかけに、ISの対日姿勢が変化か
推測ではあるが、湯川遥菜氏拘束を契機に、IS内部で改めて対日姿勢を確認する議論が行われたと自分は見ている。

前回の記事で、湯川氏が拘束された時の記事を上げた。あの状況から読み取れるのは、ISが湯川氏を日本人と知った上で拘束した訳ではないことである。戦闘後のアレッポで、索敵警戒か何かで出動したISの部隊が怪しいアジア人に遭遇し、捕まえてみたらたまたま日本人だったのだ。
この時点で、ISは、まだ日本を明確に敵国としていた訳ではないだろう。

ISは、湯川遥菜なる日本人を拘束したことをジハードのHPで公表した訳だが、このことで湯川氏拘束に直接関与しなかった他の部隊にも状況が知れ渡った。当然、他の部隊からは「何故、日本に身代金を要求しないんだ?」との声が上がったはずだ。

イスラム戦争法の下では、健康な成人男子であれば、仮にまったく戦闘に関わっていなかったとしても戦闘員として捕虜にできる。ISは、湯川氏にもイスラム戦争法を当然に適用する。捕虜としたなら処刑するか、奴隷にするか、身代金や捕虜交換により釈放するか、恩赦により釈放するかを決めなければならない。これらの選択肢のうち、恩赦以外は日本との関係を悪化させるものばかりだ。

つまり、湯川氏を拘束したISは、ここに至って対日姿勢をも明確にしなければならなくなったのだ。

対日姿勢の議論で主導権を握ったのは、ISに多数参加するフセイン政権の担い手だった者たちであろう。
彼らにしてみれば、日本は潜在的な敵国なのだ。日本は、ISの宿敵である米国の同盟国であり、米国がフセイン政権を潰したイラク戦争でも後方支援も行った国だ。フセイン政権下で我が世の春を謳歌していた彼らが、テロリストに身をやつす羽目になった責任の一端は日本にもある。

こうしてISは、「日本は敵国として扱うべし」との意見で統一されたと考えられる。

日本からのリアクション 後藤健二氏のIS接触
一方、ISがジハードのHPで流した湯川遥菜氏拘束の情報に、日本側で強く反応した人物が居た。後藤健二氏である。

かつて、自由シリア軍に捕まった湯川遥菜氏を交渉の末に助けたことがある後藤氏にとって、湯川氏は知らない仲ではない。シリアへ医薬品を届けて感謝されたことに目を輝かせた湯川氏に、自分と同じ-ように戦災に苦しむ人々を支援する同志になれる、と期待もしていただろう。後藤氏は、湯川氏を救出するために積極的に動く。

後藤氏の中東取材は、2003年のイラク戦争にまで遡る。米軍による空爆下のバグダッドの市民生活に密着し、自由に街を歩けない市民の様子、遺体を庭に埋めるしかない病院など、戦争の悲惨さを取材している。イラク戦争後もたびたび中東へ足を運び、戦災で荒廃した現地を見続け、ISのような過激派が台頭してくる将来の危険性にも言及していた。

そんな後藤氏にとって、ISへの接触は難しくなかったはずだ。「日本人ジャーナリストの後藤健二が、湯川遥菜を助けるため、ISと接触したがっている」という情報は、後藤氏の願う通り、確かにISへ伝わったのだ。

ネットを使えるISにとって、ジャーナリストとして実績のある後藤氏の人となりを調べるのは造作もなかっただろう。そして、こう判断したはずだ。「英語を話せて、アラブ語も幾らか通じるであろうこの男は、良い人質になる」と。意思疎通に難のある湯川氏より、後藤氏の方が人質として有用であり、単純に使えるガードが増えるのは好都合である。

ISは後藤氏に「会おう」と返答し、2014年11月、今度は計画的に後藤氏を拘束した。

後藤健二さんの妻に20億円要求 「イスラム国」側がメール
(朝日新聞 15/1/22)
イスラム過激派組織「イスラム国」に拘束されたジャーナリスト後藤健二さん(47)=東京都=の妻あてに昨年11月~今年1月、後藤さんの拘束を伝え、身代金を要求するメールがイスラム国関係者から送られていたことが政府関係者への取材でわかった。妻は相手側と約10通のメールをやりとりして、後藤さん本人の拘束が間違いないことを確認した。身代金の要求額は20億円余だったという。

後藤さんは昨年10月下旬にシリア入りし、間もなく連絡が途絶えた。政府関係者によると、妻は同月末に外務省に相談。メールが届いたのはその後で、昨年12月初めに、このメールに気づいて開封した。メールには、後藤さんの身柄を預かっていることが英文で記されていた。

妻は内容の真偽を確かめるため、後藤さん本人しか知り得ない事柄についてメールでただしたところ、複数の質問に対して正しい回答が返ってきた。届いたメールのなかには、他の外国人の誘拐事件で被害者側とイスラム国側がやりとりした情報にたどり着くアドレスが記されたものもあり、情報の内容が過去の被害と合致したという。


日本を敵国とし、いつもの外国人誘拐として扱うIS
ISはいつもの外国人誘拐の例に倣って、20億円の身代金を請求するメールを、後藤氏の妻に送りつけた。

身代金を要求するメールが来たとはいえ、それは後藤氏個人の問題であり、この時点で既にISが日本を敵と見なしていたかどうか解らない、という人も居るだろう。しかしそれは、個人主義が進んだ日本人の感覚である。

復古主義的なISは、素朴に「同胞の危機に怒らない国などない」と考える。ヨルダンは、ムアーズ・カサースベ中尉が既に殺されていたことを知るやいなや、サジダ・リシャウィ死刑囚の死刑を執行した。この感覚こそ、ISが描く国民感情である。

それでも、身代金を払えば後藤氏は無事に返してもらえる訳で、ISと日本の敵対は決定的ではないと考える余地はあるはずだ。しかしこれも、ISを「事件の結末を想像もせずに見切り発車する犯罪集団」と見くびっている。

ISが想定する後藤氏の事件の結末は二通りで、一つは要求通りの身代金を受け取ったことによる後藤氏解放という結末であり、もう一つは解放交渉が決裂し後藤氏を殺害するという結末である。これらはISによる外国人誘拐のパッケージであり、後藤氏殺害も事件の行方として想定の範囲内に含めるのが当然だ。決して、その場の勢いに任せて身代金を要求することはないし、交渉が頓挫した時に「どうする?本当に殺すのか?」と狼狽えたり、迷ったりすることもない。
ISは、非道で残忍ではあるが、決して無能ではないからだ。

つまり、ISは、後藤氏の妻へ身代金を要求するメールを送った時点で、既に後藤氏殺害という結末とそれに伴う日本からの反感を甘受する覚悟を決めていた訳である。

(続く)

ISによる日本人人質事件を整理する(1) -湯川遥菜氏拘束-

まずは、湯川遥菜氏が拘束された時のニュースを振り返ってみよう。

シリア日本人拘束か YouTubeに「尋問動画」 湯川氏? 「日本から来た」「写真家だ」
(産経新聞 2014/08/18)
シリア北部アレッポで日本人が、過激派「イスラム国」に拘束された可能性がある問題で、動画投稿サイト「YouTube」には17日までに、拘束された「湯川遥菜(ゆかわ・はるな)」氏とみられる男性の動画が投稿された。

動画は2分弱で、英語で「日本人の尋問」との題名が付いている。額から血を流している男性が地面に倒れている様子が写っており、背後には現地のものとみられる音楽が流れている。

英語で「どこから来たのか」と尋ねられ、男性が「日本」と返答したが「嘘をつくな」などと応じる声が聞こえる。その後、名前を問われると「ハルナ・ユカワ」と答えた。

この場所にいる理由を問われると「仕事だ」と応じ、職業については「写真家」と話し、医者とジャーナリストの「半分半分」だとも返答している。

 「写真家はこんな格好をしてない」「なぜお前は銃を持っているんだ」とも質問されている。動画には、刃渡りの長い剣のようなものが、男性の胸元に突き付けられる様子も写し出されている。

この男性のものとみられるフェイスブックのページには、アレッポで銃器を構えた写真やイラク・キルクークなどでの写真が掲載されている。職業欄には「民間軍事会社」と記載されている。


湯川氏が地面に転がされて尋問される姿は、ショッキングな光景であり、覚えている人も多いだろう。今回は、事件を整理するのが目的であるため、まずは「何故、あのような尋問に至ったのだろうか?」というところを考えたい。

ISは何を捕まえたつもりだったのか?
湯川遥菜氏を拘束した時、ISは何を捕まえたつもりだったのだろうか? “何を”というのは、“湯川遥菜氏をどういう人物と見ていたのか”という話である。

湯川氏が拘束されたのは、シリア北部にあるアレッポという町である。
時事通信などの報道によると、湯川氏は、2014年7月28日にトルコから陸路でシリアに入国。シリアに入ってからは、ISと交戦している反体制派武装組織の部隊に同行していた。そして、8月12日から14日にかけて、ISがシリア北部アレッポ近郊で激しい攻撃を仕掛けた際、湯川氏は部隊から逸れ、ISに拘束されたとみられている。

戦闘後間もない町で見つけた銃を持つアジア人を、ISの末端兵士は相当に怪しんだはずである。

当初、ISの末端兵士は湯川氏を、シリア側に立つ敵兵と認識したはずだ。IS側もシリア側も世界中から様々な人間が入り込んでおり、中にはアジア人も居る。だから、上の記事のような尋問になったのだ。

偶然にも手にしてしまった日本人人質のカード
傷めつけて尋問してみても湯川氏は「日本人だ」と言い張るし、訓練された兵士にも見えない。アラブ語での意思疎通はままならず、英語でのやり取りも怪しい状態で、ようやく「ここに居た目的は不明だが、どうやら本当に日本人であるらしい」となったのであろう。

さて、これで頭を悩ませたのは、湯川氏を拘束したグループの幹部だ。
末端の兵士なら、「怪しげな異教徒を捕まえた」と胸を張り、「日本人は金持ちだから身代金も手に入る」と無邪気に言える。しかし、日本は米国の同盟国であるものの、有志連合には参加しておらず、2014年8月の時点では明確なISの敵国とはなっていない。その日本を敵にすると、わざわざIS側から宣言することが、IS全体の利益になるかは判然としなかったはずだ。

だから、湯川氏に関するIS側のアクションは、徹底に欠けることになる。ISは、ジハードのHPで「日本人のスパイのユカワ・ハルナを拘束した」という情報を流しただけだった。

拘束した異教徒を何もせずに解放する訳にもいかず、いつもの外国人誘拐と同様に「カネを出さないと湯川を殺すぞ」と脅して日本人からの反感を買う訳にもいかない。正直、ISは、たまたま手に入れた日本人人質というカードを持て余していたと思われる。

この辺りの事情を示す話として、次のような報道もある。

「イスラム国側、3カ月前は身代金要求せぬと明言」
(ANNニュース 15/01/22 18:38)
3カ月前は、「身代金の要求はしない」と明言していたということです。

ジャーナリスト・常岡浩介氏:「(3カ月前には)『身代金の要求はしない』『見せしめの殺害はしない』と明言していた」

ジャーナリストの常岡氏は去年8月、「イスラム国」の幹部から「湯川遥菜さんの裁判の証人として来てほしい」と要請があったことを明らかにしました。その後、常岡氏がシリアで幹部と面会したところ、「身代金の要求や処刑はせず、イスラム法の裁判を行う」と話していたということです。常岡氏は「救出のために協力するが、外務省などから要請がない」としています。


今年の1月から三カ月前というと、昨年の10月頃のことである。
常岡氏の話を裏付けできないため、真偽は不明である。しかし、湯川遥菜氏の扱いが、他の欧米人人質と異なる点を説明し得る話である。敵の捕虜として扱い身代金を要求することはないが、イスラム法の裁判を行うというのは、せっかく捕まえた湯川氏について、IS内部が納得する処遇を決めようと思案するIS幹部の政治センスを感じる。

<続く>

<ビンラディン容疑者殺害>残るいくつかの「謎」を検証 ・・・「逮捕ではなく、射殺ありき」で良かったのか?

<ビンラディン容疑者殺害>残るいくつかの「謎」を検証
(毎日新聞 5/4付)

米国が「正義を達成した」と誇る国際テロ組織アルカイダの最高指導者ウサマ・ビンラディン容疑者の殺害には、いくつかの「謎」も残る。遺体をなぜ水葬したのか、容疑者本人と断定した鑑定に疑問はないのか、パキスタンの首都近郊で敢行した今回の作戦が本当に米単独で可能なのか--。専門家の分析などを基に検証した。【平地修、石原聖、朴鐘珠、真野森作、前田英司】

■米空母から海へ
米国防総省高官によると、水葬は2日未明(米東部時間)、北アラビア海に展開する原子力空母カール・ビンソンの甲板で執り行われた。体を清めて白い布で包むなど約1時間かけて準備した後、遺体を海中に下ろしたという。AP通信は当局者の話として、水葬の理由を「遺体の引き取り手がないため」と伝えた。

京都大大学院の小杉泰教授(イスラム学)は「イスラム社会では通常、死亡した翌日までにモスク(イスラム礼拝所)で祈りをささげて埋葬するのが慣例」と解説する。イスラムでは、人間は土から創られたとされ、死後は再び土に返すため必ず土葬する。水葬は、船上で死亡して遺体を保存できないなどの場合にしか認められない。

地上で殺害されたビンラディン容疑者は、こうした例外ケースに当たらない。小杉教授は「葬儀は共同体の連帯義務で、引き取り手がない場合でもモスクに遺体を運べば埋葬してくれる」と説明し、「米当局の行為には遺体が奪回されるのを避けるため海に『捨てた』との疑念を持たれる恐れがある」と指摘した。

■「99.9%」一致
米当局は、遺体から検出したDNAとビンラディン容疑者の親類のDNAを調べた結果、「99.9%」一致したと説明。さらに、殺害現場で米軍特殊部隊が撮ったビンラディン容疑者の遺体の顔を照合した結果も「95%」合致したとして、本人と断定した。

筑波大大学院の本田克也教授(法医学)は「一般的に確実に本人と断定するには最低限、親子関係でのDNA鑑定が必要だ」と説明する。さらに、鑑定対象がビンラディン容疑者のような重要人物であれば「血痕など本人の試料で『同定』しているはずだ」と言う。

DNA鑑定の結果が判明するには少なくとも半日程度はかかる。米当局の発表では、急襲作戦でビンラディン容疑者を殺害し、その日中に早々と「本人」と断定した。本田教授は「1日で鑑定を終えること自体は不可能ではない」としながらも、「『同定』を確実にするには同じ鑑定者、鑑定機関で2、3回は確認すべきだ」と指摘。「本人と言えるほど十分な鑑定が行われたのだろうか」と話した。

■事前通告した?
米当局は今回の作戦実施について、パキスタン政府には事後報告したと説明している。しかし、現場はイスラマバード近郊のパキスタン軍施設が集まる町だ。現地に詳しい外交筋は「他国のヘリが夜中に軍事作戦を始めて反応しないはずはない。(パキスタン軍が静観したのは)直前に米側から通告があったからだろう」とみる。

これに対し、大阪大の山根聡教授(南アジア・イスラム文化)は、「パキスタン軍の一部はビンラディン容疑者の潜伏に気づいていたはずだ」と指摘。米側がパキスタン当局から容疑者に情報が漏れるのを警戒して「事後報告か、何か別の作戦を実施すると説明していた可能性はある」と分析した。

米国が他国で遂行した今回の作戦について、現地情勢に詳しい田中浩一郎・日本エネルギー経済研究所理事は「事後通告なら明らかな主権侵害であり、事前でもパキスタンの同意がなければ主権侵害だ」と指摘する。ただ、国内の反発を考えればパキスタンには同意できない事情もあり、「(作戦が実施されたこと自体には)驚かない」との見方を示した。

・・・「逮捕ではなく、射殺ありき」で良かったのか?
その始まりにおいて他宗教・他部族との戦争を経たイスラム教は、武闘派的色彩を必ずしも否定しない宗教です。しかし、良好な関係を築き得る対象へのテロリズムを奨励する宗教ではありません。

イスラム教の信仰とテロリズムを結びつけているのは、あくまでビンラーディン容疑者のようなテロ組織の主導者ら。そのテロ組織の主導者を生きて裁判にかけて、公的に「信仰とテロリズムを切り離す機会」を得ることこそ、米国や諸外国の安全につなげる解決方法だったのではないでしょうか?

「何事も穏やかに解決するため、テロリストと交渉せよ」と、言っているわけではありません。

テロリズムを推進する人物の思考と、真の信仰を追究する教徒としての姿とは、論理的かつ客観的に異なるということを証明して見せる必要があったのではないかと考えているわけです。信仰とテロリズムの分離は、テロリズム以外の方法による信仰の証明を考えさせることであり、テロリズムの恐怖を抜きにして、開祖・ムハンマドが描いた望ましい世界の姿とは何だったのかを、宗教の壁を越えて理解し合うことにつながると思うからです。

こうした思想的背景の整理こそ、イスラム教をテロリズムの温床から開放する、本当のテロとの戦いなのではないでしょうか?

米海軍特殊部隊が頭部を撃つ 息子1人も殺害か ・・・「本物が死んだのか?」 虚像・象徴化懸念

米海軍特殊部隊が頭部を撃つ 息子1人も殺害か
(MSN 5/2付)

米メディアによると、ウサマ・ビンラーディン容疑者は、米海軍特殊部隊SEALS(シールズ)隊員に、頭部を撃たれ殺害された。

またロイター通信が政府高官の発言として報じたところによると、同容疑者の息子1人も殺害されたという。

「テロの脅威はむしろ増大」ICPO事務総長が警戒呼び掛け
(MSN 5/2付)

国際刑事警察機構(ICPO)のノーブル事務総長は2日、国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者が殺害されたことで、テロの脅威はむしろ増大するとして、加盟国に警戒を呼び掛ける声明を発表した。

声明は「ビンラーディン容疑者の死は、アルカーイダの力をそぐ打撃だ」としつつ「加盟国の治安当局者には、容疑者の死を受けてアルカーイダと関係がある、あるいはアルカーイダに触発された組織によるテロのリスクの増大に備えるよう呼び掛ける」とした。

さらに「容疑者の死は、アルカーイダ系組織の壊滅を意味するわけではない」と指摘。「われわれは協調して、あらゆるテロに対する戦いを続ける必要がある」と強調した。(共同)

・・・「本物が死んだのか?」 虚像・象徴化懸念
9.11以降、巧く逃げ回ってきたとはいえ、所詮は「人の業」。人の手によって、ビンラーディンの逃走劇に終止符を打つ日が来るとは思っていました。

しかしそれでも、「本当に、本物のビンラーディンを殺したのか? 影武者ではないのか?」という疑いを持たずにはいられません。パキスタンのテレビニュースでは、ビンラーディン容疑者の遺体の映像が流れたそうです。が、聞くところによると既にその遺体は「水葬」されているらしく、結局、至近の情報を持っているのは米軍のみ。

この「米軍しか情報を持っていない」という状況は、テロとの戦いにおいて、非常に危ういものだと感じます。

サダム・フセインは、米軍が身柄を拘束したものの、その所在は、留置から裁判・処刑されるまで全世界に知らされていました。フセインの時代の終焉は、充分な時間をかけて、全世界が共有したわけです。

ですが今回は、「銃撃戦中の容疑者死亡」。世界的に共有するにはあまりに唐突であり、混乱の中で終わったという印象があります。テロが、絶対的なリーダーによる組織犯罪ではなく、同志的組織による犯罪であることを考えれば、この曖昧さの残る終わり方は、ICPO事務総長が指摘するようにリスクの増大を感じさせます。

作戦遂行上、やむを得なかったのでしょう。けれども、本当に終わったということを共有できない幕引きは、「実はあの日死んだのは影武者だ。本物のビンラーディンから、指令が出ている」という流言飛語を生む温床を作ってしまったのではないでしょうか?

せめて、ビンラーディン容疑者死亡を疑いようのない程、大々的に見せつける葬儀を行っていれば、と思います。「ビンラーディンの時代は終わった」という事実を、世界が共有するために。

リビア西部で30人死亡 ザウィヤ衝突、政権側が奪還か ・・・軍事独裁の恐ろしさ、民主主義の重さ

リビア、首都西郊奪還へ猛攻 反体制派の70人死亡
(共同通信 3/5 17:56)

【トリポリ共同】中東の衛星テレビ、アルジャジーラなどによると、リビアのカダフィ政権は5日、戦車や航空機を投入し、反体制派が勢力下に置く首都トリポリ西郊ザウィヤへの猛攻を開始した。反体制側の防衛線は突破され、反体制派とみられる約70人が死亡した。

ザウィヤはトリポリの西約50キロ。住民らは、住宅地区に対して爆撃が行われていると証言。反体制側は対空機関銃や小銃などで武装しているが、戦力差が大きく圧倒されているもよう。

カダフィ政権は、反体制派が掌握した都市への反攻を強め、4日もザウィヤを攻撃。現地からの情報によると、反体制派の指揮官を含む40人以上が死亡していた。

リビア西部で30人死亡 ザウィヤ衝突、政権側が奪還か
(中日新聞 3/5 13:03)

【トブルク(リビア北東部)=杉谷剛】リビアの騒乱で、首都トリポリの西方50キロの町ザウィヤで4日起きた最高指導者カダフィ大佐派と反体制派の衝突で、反体制派を中心に少なくとも30人が死亡した。リビア東部の港町ラスラノフでは同日、反体制派が空港をはじめほぼ全域を制圧したもよう。ロイター通信などが伝えた。

ザウィヤでは4日、金曜日礼拝後にデモ行進する反体制派の参加者らを政権側の部隊が重機関銃で攻撃。屋上には狙撃兵が配備され、参加者を次々と狙い撃ちしていたという。4、50人が死亡したとの情報もある。

ロイター通信によると、反体制派はまだザウィヤ中心部の広場を掌握している。ただ政権側は「一部を除いて町は解放された」と、ザウィヤを奪還したと発表した。

一方、トリポリの東方約660キロにあるラスラノフでは、反体制勢力が「カダフィ大佐派の兵は退却した」ことを明らかにした。空港のほかに国軍基地や石油精製施設も支配しているという。

その半面、同じく東部のベンガジでは、政権側が反体制勢力に対し激しい空爆を繰り広げ、多くの犠牲者が出ているという。地元住民はロイター通信に「多くの反体制派が死亡した。さらに多くが病院で治療を受けており、町は危険な状況にある」と語った。

・・・軍事独裁の恐ろしさ、民主主義の重さ
自国の民衆への空爆も辞さない軍事政権に抗するリビアの民主化運動。

日本国民の有権者は、民主主義の価値をここまで真剣に受け止めているのか。投票率60%超でさえ高投票率と呼ばれる国にいて、色々と考えさせられます。


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鮎滝 渉

Author:鮎滝 渉
千秋真一に23%似ているらしいブロガーです。
実家である愛知県に戻ってきました。
ほぼ日刊で更新中。日々の巡回サイトに加えてやってください。
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ブロガー名を、「鮎滝 渉」へ改めました。
私が自分に付けた最初のペンネーム。そして、「一角の者になるまでは使うまい」と思ってた名でもあります。

大して公知のペンネームというわけでもありません。が、1回目の中小企業診断士試験の失敗以降、あれこれと思い悩む中、「“輝かしい名としようする執着”はかえって醜い。そろそろ、この名を名乗る覚悟をしよう」と決意。鮎滝の名を使うことにしました。

ちなみに、旧ブロガー名は「スクナビコナ」。
日本神話に出てくる知恵の神様の名前です。恐れ多い名前ですが、ブログをする気構えとして、使っておりました。

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