北朝鮮が、米国から「テロ支援国家」に指定された経緯 北朝鮮は、1987年11月「大韓航空機爆破事件」をきっかけにアメリカ合衆国によって、テロ支援国家に指定されました。
そのほか、プルトニウムを使った核爆弾の開発問題、よど号ハイジャック事件を通じて日本赤軍を匿ったこと、ミサイルおよびその技術などの違法輸出、国家規模でのドル紙幣偽造(通貨テロ)の嫌疑などをもって、継続して米国による「テロ支援国家指定」を受けることになりました。
テロ支援国家指定とは? その解除要件は? 北朝鮮に対する「テロ支援国家指定」が、アメリカ合衆国の国内法に基づくものであることは当ブログでも何度か言及しました。「テロ支援国家指定」とは、アメリカ国務省が国際テロ年次書で「国際テロ組織に資金・武器提供などの支援をしている国家」として列挙している国のことを言います。
米国による「テロ支援国家指定」を受けると、対象国は武器関連の輸出・販売禁止、経済援助禁止、金融規制などの制裁措置が取られます。また、米国が第1位の出資国となっている世界銀行による融資・経済援助も受けられなくなります。さらに、米国の同盟諸国も、米国に歩調をあわせて同様の制裁措置を行ないます。 そのため、経済・政治・軍事において世界最大の国であり、国連常任理事国でもある米国による「テロ支援国家指定」は、世界の大半を敵に回すこととほとんど同義となります。
しかし「テロ支援国家指定」は、「過去6カ月間に国際テロ支援をしておらず、対象国政府が将来もテロ組織を支援しないと確約していること」を要件として、その指定を解除することができます。
2008年6月30日現在、テロ支援国家指定を受けているのは、北朝鮮、イラン、シリア、キューバ、スーダンの5カ国。 ただし北朝鮮については、先日の『核計画申告書』の提出をもって指定解除手続きが開始。同申告書で致命的な虚偽がない限り、8月上旬には解除手続きが完了する見通しです。
日本による北朝鮮「テロ支援国家指定解除」の幇助 日本による北朝鮮「テロ支援国家指定解除」の幇助とは、今月11、12日に行なわれた「日朝実務者協議」のことです。
同協議では、日朝間で以下の同意がなされました。 ・北朝鮮は「拉致問題は解決済み」としてきた従来の姿勢を改め、解決に向けた再調査を約束 ・北朝鮮は「よど号」乗っ取り犯の引き渡しに協力する用意を表明 ・日本は北朝鮮の姿勢を「一定の前進」と評価 ・対北朝鮮制裁のうち渡航自粛など人的往来と航空チャーター便の乗り入れに関する規制を解除 ・北朝鮮籍船の入港を、日本からの人道支援物資の積み込みに限り容認
上記同意事項を「国際政治上の文言」で要約すると、「拉致被害者の再調査と、よど号乗っ取り犯の引き渡しを条件に、日本は北朝鮮と手打ちをして制裁を停止する」ということになります。
米国の「テロ支援国家指定」解除について、日本人拉致と日本赤軍の扱いは米国が直接関わることができる問題ではありません。これらのことについて、事実上、日本が北朝鮮と手打ちすることを宣言したため、米国は核開発問題だけ解決すればよくなったわけです。
米国、英国、スイス、エジプト・・・ 北朝鮮への融資準備を着々と 北朝鮮は、自力開発能力がないだけで、石炭や鉄鉱石のほか、タングステンといったレアメタルなどの地下資源が豊富な国です。 そのため、米国によるテロ支援国家指定以前、各国が北朝鮮の地下資源開発を目当てに融資準備をしていました。インフラが未熟な北朝鮮の場合、この地下資源開発にはもれなく、掘り出した資源を運び出すためのインフラ整備のための融資も含まれてきます。
英国では大物投資家たちによる融資ファンドが組まれ、スイスは国を挙げて融資準備。エジプトは携帯電話事業での北朝鮮参入を画策しています。 こうした各国の融資合戦でも、資金面・施設面ともに群を抜いてトップを走っていたのは米国でした。関係筋によると米国は既に、「北朝鮮のどこに、どんな地下資源があるのか」をすべて掌握しているという話もあります。
「テロ国家指定解除」で、政界と財界の利害が一致する米国 任期切れ間近となった米国・ブッシュ大統領にとって、イラク戦争失敗の穴を埋めるためにも、「核開発問題を解決してテロ支援国家を一つ減らした」という成果は、有終の美を飾るのにピッタリの話です。また、イランやシリア、イスラエル、パレスチナなど中東問題が再燃しつつあることもあり、「外交問題を中東に絞りたい」という意向は次期政権にもつながる考えです。
一方、米国の国内経済は停滞期。このような中で、準備万端整っている北朝鮮への融資を開始できることは、米国財界にとって美味しい話となるわけです。
北朝鮮問題で「総合的な対応」が見られない日本 では日本はどうかと言うと、さっぱり米国のような「総合的かつ周到な対応」が見られません。
「北朝鮮でのビジネスチャンスを手に入れよ」とは、私の立場に反するため言いません。しかし、米国国内法に過ぎない「テロ支援国家指定」で、完全に北朝鮮の国際的地位を操作してきた米国と比べると、日本の外交力の低さは目に余ります。 日本も世界銀行への出資比率・世界2位(約8%)を誇る経済大国であり、たとい米国が北朝鮮の「テロ支援国家指定」解除をしようとも、日本だけでやれる『対話と圧力』は残っているはずです。
にもかかわらず、高村外相も「日朝実務者協議」を「一定の前進」と評価し、福田首相も『核計画申告書』の提出について判を押したように「一定の前進」と評価しているのはいかがなものでしょうか? 北朝鮮による拉致被害者を再調査については、「拉致被害者を再調査した結果。現在、北朝鮮にいる日本人は各自の自由意思で北朝鮮にいるから帰らない」という最悪のシナリオも考えられる状態なのです。
これは、『内閣不信任決議』に値する失策ではないでしょうか?
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