「一体何の意味があるのか?」月面2足歩行ロボットに批判
(J-CASTニュース 5/29付より)政府が策定を進めている「宇宙基本計画」が、思わぬブーイングに見舞われている。この計画自体は、情報収集衛星を増強したり、有人での月探査を目指したりする意欲的なものなのだが、「2足歩行ロボットでの月探査」という項目に、批判が続々と集まっているのだ。
■「お金をかけて何がしたいかわからない」日本の宇宙開発についての基本方針を定めた「宇宙基本法」が2008年8月に施行され、これに基づいた国家戦略「宇宙基本計画」の策定が進められている。麻生首相が本部長を務める「宇宙開発戦略本部」が案をまとめ、09年4月28日から5月18日にかけてパブリップコメントが募集された。
各地から寄せられたパブリップコメントでやり玉に挙がっているのが、「月面2足歩行ロボット」。
これは3月6日に行われた専門調査会の場で、専門調査委員のひとりである元宇宙飛行士の毛利衛氏が提案したもの。毛利氏が提出した資料では、国家目標として「日の丸人型ロボット月面歩行計画」をかかげ、「有人・無人の議論を超えた第三の道」「日本独特な有人宇宙開発の提案」などどうたっている。
計画案では、2020年頃に日本独自でロボットを活用した月の無人探査、25~30年頃に宇宙飛行士とロボットが連携した有人月探査を目指しており、「2足歩行ロボット」も、その中の案として出てきたものだ。計画案には458人から1510件のパブリップコメントが寄せられたのだが、そのうち約80件が「2足歩行ロボット」に集中。
中には、「月や火星・金星への探査計画に、人は送れなくとも耐環境型の自立ロボットを帯同させることも日本独特の研究といえます」と、好意的なものもあるが、ほとんどが批判的なものだ。
「唯一新しいのは、ニュースなど、マスコミが大々的に報道した『2足歩行ロボットを月へ』という部分だが、これに一体何の意味があるのか?そもそも月に着陸する必要がどこにあるのか?というところからして、必要性、国家戦略が明確にはなっていない」
「『月面上ロボットに2足歩行型』はナンセンス。お金をかけて何がしたいかわからない。それでは子供たちはわくわくしませんよ。大人の自己満足以外の何物でもない」
といった、2足歩行ロボットの無意味を訴えるもの。
「2足歩行ロボットによる探査が提案されているが、そもそも月面は地球とは重力、温度環境、表層環境などが全て異なる世界であり、そういった世界に2足歩行のロボットを持っていったとしても、できることはきわめて限られている」
「現在の日本の2足ロボット技術の優位が、宇宙環境(真空、極端な環境温度変化、放射線、無重力など)ですぐ役立つものではなく、むしろ新規の高度な技術開発が必要」
と、「日本が得意とされる2足歩行ロボットの技術も、宇宙に行くと役に立たない」という趣旨の主張も散見される。
■有人探査では「人間に近い形状が意味を持ってくる」?戦略本部では、これらの反発について、発表資料の中で
「多数ご意見をいただいておりますが、我が国が得意とする特徴あるロボット技術であること、将来の有人探査を視野に入れたときに、人間に近い形状が意味を持ってくること、また、これが実現できれば、高度なロボット技術の実現と宇宙技術の融合が図られるなど大きな技術的波及効果が期待され、本来の探査の成果と合わせて、我が国の優れた技術力をアピールできるという点で宇宙開発戦略専門調査会にて肯定的に議論が行われております」
と反論。「2足型」が人と共同作業する時に強みを発揮すると考えている様子だ。
パブリックコメントでの指摘を反映させた計画案は5月26日に開かれた専門調査会で大筋で了承され、6月上旬の会合で正式決定される。
戦略本部では、「この種のものに寄せられるパブリップコメントは、せいぜい2桁か、百数十件程度。4桁は、ちょっと見たことがありません」と驚いている。
パブリップコメントを寄せた人の属性については非公表だが、
「概観すると、宇宙関係部局(端的にはJAXA)のやりたいこと、進めたいプログラムの希望、等々が大体記述されていて、有人宇宙飛行以外は現場の声が反映していると思われる。この種の計画書に書いてもらえたのは関係者として慶賀すべきことだと感じる」
というものもあり、関係者と思われる、技術的に詳細な記述がされたものも多い。
バランス維持を問われる2足歩行の非合理
スクナビコナは、2足歩行ロボットを実現させる技術についての高さは評価していますが、実はその実用性については疑問を持っています。そのきっかけは漫画『機動警察パトレイバー』。ワイド版で読んだので、12年ぐらい前の話です。
『パトレイバー』は、ロボットテクノロジーの発達によって登場した“汎用多足歩行型作業機械・レイバー”が、建設現場や戦場などで普及した近未来世界を描いた作品。警察がレイバー犯罪、建設用レイバーの飲酒運転やレイバーによる破壊行為などを取り締まるために、汎用2足歩行型・レイバー(通称:パトレイバー)を導入。同機を運用する「特殊車両二課」の隊員たちを中心に、ストーリーが展開していきます。
2足歩行ロボットが大活躍するわけですが、産業技術面へもこだわったこの漫画には、2足歩行の欠点を指摘する場面が出てきます。
メカニックと隊員の会話で、「人間が立った状態でバランスを崩して倒れそうになると、一歩、外へ足を踏み出してバランスをとろうとする。したがって、パトレイバーが街中で民家の間近を歩くのは厳禁。誤って、民家に足を踏み入れて壊してしまわないように、周囲へ気を配る必要がるという下りがある」といった指摘がされます。またレイバー研究の権威という人物が、バランス維持を問われる2足歩行は合理的でないと吐露するシーンもあります。
よくよく考えてみたらその通りで、2足歩行は非常に不安定です。転びかけて、手をつく、足を出すというのはよくあることでしょう。その人間がわざわざ作るものが、2足歩行である必要はありません。
また、人間に立ちくらみ、足を何かに引っ掛けて転ぶということがあるように、全身を電子機器で制御するロボットでも、どこかで不具合を起こす、足を引っ掛けることもあるでしょう。
4足歩行や6足歩行、キャタピラで十分では?
2足歩行は、本体が占有する面積が減らせるために汎用性が高くなるのは確かです。けれども、ロボットが狭小地域に入って作業する重要性がどこまであるのか、熟慮が必要ではないでしょうか?
もし、人間との共同作業中にロボットが倒れ掛かってきたら、骨折程度のケガでは済まないでしょう。
人間に倒れてきてもケガをさせられないようにするには、人間の子どもぐらいの大きさでの軽量化、ロボット側の装甲を壊れやすくする対人傷害軽減ボディーの採用など課題は様々。大病院のない宇宙空間での共同作業となれば、もっとハードルは高くなるはずです。
重要観測データの蓄積、動作記録の蓄積、故障・修理回数の減少を考えれば、転倒事故などロボット自体がダメージを受ける機会は、極力減らさなければなりません。
それならば、そもそも倒れないようにする方が一番。4足や6足歩行でバランスを取り易くしたり、『ガンタンク』みたいにキャタピラ移動にしてしまえば転倒事故は大きく減らせます。
米国が火星探査で打ち上げた無人車・マーズ・エクスプロレーション・ローバーの「オポチュニティ」は、2004年に火星に着陸。NASAが想定した耐用期間の10倍以上が過ぎた2008年現在も性能を維持したまま活動を続け、火星の地質学的な分析を行っています。

↑「オポチュニティ」が送ってきた火星表面の画像

↑無人火星探査機・オポチュニティ
でも、月面探査で2足歩行である必要はないのでは?
またバランス維持に割くソフトウェア負担の軽減を考えれば、4足歩行の下半身に2本の腕を付けた上半身でもよくありませんか?