会計検査院の調査で、国道トンネル工事において、国が出口付近の土地を取得しないまま着工するケースが相次いでいることが分かりました。
会計検査院の調査では、2006年度までの3年間に全国69か所で見切り発車を確認。さらに、この内の北海道、新潟、長崎県の計4か所で、地権者の反対などで最長2年10か月間も工事が中断していたことが分かりました。国土交通省は、検査院の指摘に難色上記のようなムダについて、会計検査院は「土地取得の見込みが甘い。用地確保の見通しをつけてから着工すべきだ」と指摘しています。
しかし、トンネル工事を所管する国土交通省は、「用地をすべて取得してから着工するのは効率が悪い」と難色を示しています。
見切り発車は効率的か?さて、「効率を考えたら見切り発車は仕方がない」という国交省の見解は、妥当なものなのでしょうか?
確かに、出口の用地買収が済む前に工事を始めれば、入口側からは山を掘り始められるためトンネルが貫通する日付は早くなる可能性があります。しかし、それはあくまで可能性です。現に117分の4とはいえ、工事を中断に追い込まれて、その内の3カ所はこの先の見通しが立っていません。
また、非効率は用地買収でも生じています。工事を始めてしまった国からの請負企業と出口に居座る地権者とでは、用地買収交渉において、地権者の方が断然有利だからです。
工事期間は短くできればできるほど、人件費などが下がるため安く上がるようになります。よって、工事を始めてしまった請負企業は、少しでも工事期間を短くするために買収価格を引き上げていかざるを得ません。一方の地権者は、請負企業がしびれを切らせるギリギリ、土地収用委員会への採決申請まで、ただ値段が上がっていくのを待っていれば良いわけです。
用地買収で手こずった分のしわ寄せは?さて、ここで一つ疑問が生まれます。
請負企業が飲まざるを得なくなった、高い用地買収代のしわ寄せはどこに行くのでしょうか?
もし、これがトンネル工事の総事業費に織り込み済みなら、税金にしわ寄せが来ていることになります。
トンネル工事は道路特定財源でまかないますから、元はガソリンや軽油にかけられている税金。いま取沙汰されている暫定税率に関わる問題です。
工事を中断させられたトンネルの総事業費は以下の通り。
・北海道余市町「新ワッカケトンネル」(910メートル、総事業費約28億円)
・北海道石狩市「新赤岩トンネル」(963メートル、同約29億円)
・長崎県対馬市の国道382号線「御嶽トンネル」(1200メートル、同約19億円)
・新潟県阿賀町の国道459号線「当麻(たいま)トンネル」(1330メートル、同約56億円)は
長崎で1200メートル掘ると約19億円、新潟で1330メートル掘ると約56億円。トンネルを開ける地層の強度などで、難しさにも違いがありますからは、単純比較はできませんが2.9倍、37億円差は検証の余地を感じます。
もし、総事業費に織り込まれていなかったとしたら、請負企業内でまかなうことになります。
「管理職のボーナスカット」で済むことはないでしょうから、これはこれで非常にリスクが高いパターンです。
国交省の言う「見切り発車の効率」とは?では、出口付近の土地を買収する前にトンネル工事を始める「国交省の言う効率とは何か?」と考えると、合理的なのは予算の早期確保という効率ぐらいしか思い当たりません。
見切り発車の結果で達成できた効率は、たまたまトンネル貫通前に地権者との折り合いが付いただけであって、「希望的観測の成就」に過ぎません。
民間企業で大プロジェクトを見切り発車させたりすると、上司に「アホか!」と一括され、プロジェクトは手の届かないところに遠ざけられるか潰されます。損害を出そうものなら、最悪、クビが飛びます。
トンネル工事の見切り発車は、本当に効率的なことなのでしょうか?