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ISによる日本人人質事件を整理する(3) -安倍首相のスピーチ-

身代金交渉に乗り出すことが出来ない日本の立場
ISは、もっと早い時点で、交渉相手が後藤氏の妻から日本政府に移り、日本政府から20億円の身代金を引き出す見通しを立てていた。フランス人ジャーナリスト人質事件では、フランス政府からカネを引き出した実績もある。

ところが、日本政府は積極的に動かなかった。内部環境で見れば、安倍首相のテロリスト対応は小泉純一郎氏の強いリーダー像を踏襲しており、身代金交渉では積極的に動かなかったのだ。

かつて日本は、1977年、福田赳夫政権の時に起きたダッカ日航機ハイジャック事件では、「一人の生命は地球より重い」として、乗客乗員解放のために身代金600万ドルと犯人が求めた仲間の釈放に応じたことがある。しかし、2004年から05年、小泉政権の時に起きた三件のイラク日本人人質事件では、いずれも「テロリストとは交渉しない」との立場を採り、イラクからの自衛隊撤退を求める犯人の要求を拒否している(5名仲介の協力を得て解放、1名犯人により殺害)。

また外部環境から見ると、日本政府は動けなかった、と言っても良いだろう。

日本は米国の同盟国であるが、有志連合には参加しないという微妙な立場に居る。そんな日本が、ISに身代金を払うと言えないのである。IS空爆に参加しているフランスなら、自分たちが払ってしまった身代金の分だけIS弱体化に貢献することも可能だ。しかし、日本には、この自己矛盾を日本自身で解消する手立てはない。
逆に、払わないと明言し、日本側から交渉を決裂させることも出来ない。それは、日本政府が自国民を見殺しにすることになり、自民一強と言えども政権が吹っ飛んでしまう。

日本としては、交渉を長引かせて、ISから妥協案を引き出すしか手は無かったと言える。

イスラム法には、捕虜を解放する方法として恩赦の規定も存在するため、交渉の長期化=マイナスとは限らないのだ。もし、日本に外国で活動可能な邦人救出部隊でもあれば、交渉を長引かせながら作戦を決行する機会を伺い、身代金を払うことなく二人を実力行使で救出することも考えられただろうが、当然、今の日本にその選択肢はない。

進まない身代金交渉 安倍首相のスピーチ
一向に身代金交渉に乗り出してこない日本政府の対応は、ISにとって、不満が積もったことだろう。日本政府はテロに屈しないタフな交渉相手であろうとしたわけだが、ISには煮え切らない態度に見えたはずだ。

後藤氏を拘束してから年が改まり、ISとしても次の一手を考える必要が出てきた。

その最中に行われたのが、2015年1月、安部首相の中東歴訪である。

安倍総理大臣の中東政策スピーチ
(中庸が最善:活力に満ち安定した中東へ 新たなページめくる日本とエジプト)
2015年1月17日 於・日エジプト経済合同委員会
<前略>
イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。

イラクでは、全党派を含む、国民融和内閣による安定的な統治が絶対に必要です。日本は、そのための努力を支援し続けます。地域から暴力の芽を摘むには、たとえ時間がかかっても、民生を安定させ、中間層を育てる以外、早道はありません。「中庸が最善(ハイルル・ウムーリ・アウサトハー)」。日本はそこに、果たすべき大いなる役割があると考えています。
<後略>
→全文(外務省HP内)


安倍首相のスピーチを普通に読めば、ISから逃れた難民たちは着の身着のままで逃げてきた人も居るだろうし助けなければならないな、イラクに全ての党派が融和した政権ができるといいな、所得の中間層が増えれば現状への経済的不満は減るし暴力に訴えることも減るよな、と好意的に評価できるはずである。

しかし、「日本は敵国である」と決めたISはそう聞こえなかったし、そのように聞くつもりもなかった。

前回の記事で触れたが、ISは後藤氏の妻へ身代金を要求した時点で、既に日本を敵国にする腹を決めていたと思われる。
なぜなら、身代金交渉が不調に終われば後藤氏を殺すことになるからである。「自国民を殺されて憤りを覚えない国などない」というのは、ISにとって当然の感覚だ。もし、ISが日本を敵としないのであれば、20億円の身代金要求などやらずに後藤氏を解放すべきであるし、湯川氏も合わせて無条件で解放されなければおかしいのだ。

ISにとって、IS以外はすべて敵である。世界を黒と白に塗り分けるこの苛烈な二元論こそ、ISの基本姿勢であり、世俗との間で妥協する指導者たちに不満を持つ人々をISに引き付ける力となっている。

そんなISには、日本が、敵味方どっちつかずの立ち位置に居ることさえも気に入らない。曖昧さを排除するべく、ISは、日本の安部首相による演説を「日本によるIS敵対宣言」と読み替えさせる一手を打つことにした。それが、下に示す記事の2億ドル要求動画である。

ISは、局面を進めたのだ。

最早、安部首相がカイロでのスピーチでどう言い繕うかなど関係ない。どこかで揚げ足を取れればよく、揚げ足を取れなくても「ISが追放した連中に味方した」といちゃもんを付けられれば、ISとしては用が足りるのである。そしてISは、このスピーチから『ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します』という文言を発見し、「やはり、日本はISの敵だ」と決め付ける論理に利用した。

表現に工夫を加えたところで、世界中の誰からも文句をつけられないスピーチなど出来るはずがない。それも、既に日本を敵とみなしていたISが相手では不可能であったろう。

ISに付け入る隙を与えないようにするなら、ISに故郷を追われた難民がいるのに見て見ぬ振りをし、2億ドルの人道支援をやらないとするしかない。
しかしこれは、人道支援を前面に押し出してきた日本外交の基本から離れることになるし、戦災市民の窮状を訴えてきた後藤健二氏の思いからも離れてしまうだろう。後藤氏の思いを果たすには有志連合・IS双方の即時停戦こそ望ましいが、それが実現する期間も増え続ける難民を見捨てて良い訳ではない。

「イスラム国」日本人殺害警告=湯川さんら2人か-72時間以内、2億ドル要求
(時事通信 2015/01/20-21:57)
【エルサレム時事】シリア、イラクで勢力を拡大する過激組織「イスラム国」を名乗るグループが20日、湯川遥菜さん(42)=千葉市出身=とフリージャーナリストの後藤健二さん=仙台市出身、1967年生まれ=とみられる日本人2人を人質に取り、身代金2億ドル(約235億円)を72時間以内に支払わなければ殺害すると警告するビデオ声明をインターネット上に公表した。イスラム国による日本人殺害警告が確認されれば初めてとなる。

政府関係者は20日夜、ビデオ声明について「本物の可能性が高いとみている」と述べ、信ぴょう性は高いとの見方を示した。

殺害警告を受けて、安倍晋三首相は菅義偉官房長官に対し、事実関係の確認に全力を挙げるとともに、関係国と協力し、人命第一に対応するよう指示。安倍首相は訪問先のエルサレムで記者会見し、「人命を盾に脅迫することは許し難いテロ行為で、強い憤りを覚える。直ちに解放するよう強く要求する」と表明した。政府は首相官邸の危機管理センターに対策室を設置した。

イスラム国が投稿したとされるビデオ声明には、湯川さんらとみられる男性2人が写っており、オレンジ色の服を着て、砂漠で並んでひざまずかせられている。

声明は「(安倍首相が)イスラム国から8500キロ離れた場所から、進んで(イスラム教徒を攻撃する)十字軍に参加を約束した」と非難。要求している2億ドルの身代金について、「1人1億ドル」と主張した。

安倍首相は、17日にカイロで行った演説で、イスラム国対策としてイラクなどに2億ドル程度の支援を行うと表明しており、声明は支援額と同額の身代金を要求した。これに対し、安倍首相はエルサレムの会見で、2億ドル支援は「避難民が必要としている人道支援だ」と述べ、予定通り実施すると明言した。

湯川さんは「民間軍事会社」を設立。2014年7月28日にトルコから陸路でシリアに入国し、イスラム国と交戦している反体制武装組織の部隊に同行、8月12日から14日にかけ、イスラム国がシリア北部アレッポ近郊で激しい攻撃を仕掛けた際に部隊からはぐれ、拘束されたとみられている。

一方、後藤さんは映像通信会社を創設。14年10月、自身のツイッターを通じシリアで取材中と伝えた後、同月23日を最後にツイッターの更新が途絶えている。


「イスラム国」対策2億ドル内訳、食料配給など
(読売新聞 15/02/06)
政府がイスラム過激派組織「イスラム国」対策として、周辺国を支援するために拠出する2億ドルの内訳が5日、明らかになった。

食料など人道支援や難民への教育、行政への支援など、すべて非軍事で、今年度内に実行を予定している。

イラクやシリアの国内避難民や周辺国に逃れた難民に対する水・食料の配給、仮設住宅の整備などの人道支援が8割以上を占めた。残りは、避難民や難民に対する教育・職業訓練や、国境管理や法制度整備の支援などだった。

対象は6か国で、イラクが約9000万ドル、シリア約3300万ドル、ヨルダン約2800万ドル、レバノン約1820万ドル、トルコ約1630万ドル、エジプト約400万ドル。

さらに、広域にわたる難民支援などのため、約1120万ドルを国際機関に拠出する。2億ドルの拠出は、安倍首相が1月17日にエジプトで行った演説で表明した。


(続く)
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鮎滝 渉

Author:鮎滝 渉
千秋真一に23%似ているらしいブロガーです。
実家である愛知県に戻ってきました。
ほぼ日刊で更新中。日々の巡回サイトに加えてやってください。
-------------------------
ブロガー名を、「鮎滝 渉」へ改めました。
私が自分に付けた最初のペンネーム。そして、「一角の者になるまでは使うまい」と思ってた名でもあります。

大して公知のペンネームというわけでもありません。が、1回目の中小企業診断士試験の失敗以降、あれこれと思い悩む中、「“輝かしい名としようする執着”はかえって醜い。そろそろ、この名を名乗る覚悟をしよう」と決意。鮎滝の名を使うことにしました。

ちなみに、旧ブロガー名は「スクナビコナ」。
日本神話に出てくる知恵の神様の名前です。恐れ多い名前ですが、ブログをする気構えとして、使っておりました。

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