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ISによる日本人人質事件を整理する(4) -2億ドル要求動画-(追記)

「イスラム国」か、日本人2人の殺害予告映像
(読売新聞 15/1/20)
【カイロ=溝田拓士】イスラム過激派組織「イスラム国」が公開したとみられるビデオ映像が20日、インターネット上に流れ、人質にとった日本人らしき男性2人について、日本政府に計2億ドル(約236億円)の身代金を要求し、72時間以内に支払わなければ2人を殺害すると警告した。

2人は、昨年8月にシリアでイスラム国に拘束された湯川遥菜(はるな)さん(42)(千葉市花見川区)と、ジャーナリストの後藤健二さん(47)(仙台市出身)の可能性が高い。映像に出てくる男は日本政府を批判しており、イスラム国だとすれば日本を初めて明確に標的にしたことになる。

英語で「日本政府と日本国民へのメッセージ」と題した映像は1分40秒で、アラビア語の字幕が付いている。目以外を黒衣で覆った男がナイフを持って立ち、その両側に湯川さんと後藤さんとみられる男性が後ろ手に縛られ、ひざまずいている。男に向かって右側の男性に「HARUNA YUKAWA」、左側の男性に「KENJI GOTO JOGO」の言葉がある。「JOGO」が何を意味するかは不明だ。

男は「日本の首相よ。お前はイスラム国に対する十字軍に進んで参加した。日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを支払うという愚かな決断をした。この2人を救うために2億ドル(の身代金)を支払う賢い選択を政府にさせるよう、日本国民が政府に圧力をかける猶予は72時間だ。さもなければ、このナイフがお前たちの悪夢となるだろう」などと警告している。

映像の左上には、イスラム国がこれまで米英の人質を殺害した時の映像と同じイスラム国の黒い旗のマークが出ている。人質に、キューバのグアンタナモ米軍基地に収容されたアフガニスタンやイラクの過激派と同じオレンジ色の囚人服を着せた手口なども同じだ。

冒頭には、テロ対策支援を表明する安倍首相の映像も流れた。中東歴訪中の安倍首相がイスラム国対応で避難民支援などに2億ドルの資金援助を表明したことを受けた報復とみられる。

安倍首相は20日、訪問先のイスラエルで記者会見し、「人命を盾にとって脅迫することは許し難いテロ行為で強い憤りを覚える。2人に危害を加えないよう、直ちに解放するよう、強く要求する」と非難した。

その上で、「今後も国際社会と連携し、地域の平和と安定のために一層貢献していく。この方針は揺るぎない方針であり、変えることはない」と断言。中山外務副大臣をヨルダンに急きょ派遣して情報収集を進めるほか、パレスチナ自治政府のアッバス議長とも協議して人質解放に全力を尽くす考えを示した。


動画での2億ドル要求は、身代金誘拐として詰んでいる
前々回の記事で、後藤健二氏解放については、後藤氏の妻を窓口として水面下で身代金交渉があったことに触れた。後藤氏の妻は相手側と約10通のメールをやりとりして、後藤さん本人の拘束が間違いないことを確認し、20億円の身代金を要求されていたのだ。

にも関わらず、ISは、安倍首相によるカイロスピーチを受ける形で、後藤氏・湯川氏を解放してほしければ2億ドルの身代金を用意しろ、という動画を上げた。
ナイフを持った黒尽くめの男を真ん中に、オレンジ色の囚人服を着せられた後藤氏と湯川氏を並べた画。ISから日本に向けられた初めての表立った犯行声明。そして、2億ドル(約235億円)という莫大な身代金要求。実にインパクトの大きい動画だった。

日本の首相よ。

お前は「イスラム国」から8500キロ以上も離れた所にいるのに、イスラム国に対する十字軍に進んで参加した。我々の女や子供を殺し、イスラム教徒の家を破壊するために誇らしげに1億ドルを提供したのだ。(後藤さんとみられる人にナイフを向けながら)よってこの日本人の命は1億ドルだ。さらにイスラム国の拡大を防ぐことを目的に、イスラム教を捨てた者たちの訓練費用に1億ドルを提供した。(湯川さんとみられる人にナイフを向けながら)よってこちらの日本人の命も1億ドルだ。

日本国民よ。日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを支払うという愚かな決断をした。この2人の国民を救うために2億ドル(の身代金)を支払う賢い選択を政府にさせるよう、日本国民が政府に圧力をかける猶予は72時間だ。さもなければ、このナイフがお前たちの悪夢となるだろう。

(「イスラム国」を名乗る組織の声明全文 読売新聞 15/1/20 より)


さて、ISによる声明を改めて示したわけだが、動画のインパクトの所為で、注意を払うべき幾つかのことを当時は見落としていたことに気づかされる。

まずは、「え?じゃあ、あの20億円は何だったの?」という話である。遅々として進んでいなかったとはいえ、ISは後藤氏の妻に身代金20億円を要求していたはずである。それを、一方的にご破産にして、一人あたり1億ドル(118億円)と6倍の身代金をふっかけてきている。昨日までと言っていることが違うのだ。

また、これまでの水面下交渉では後藤氏の妻という窓口があったのに、動画では日本の首相に対する呼びかけという形をとっている。「すると、ISと後藤氏の妻の間に出来ていた交渉ルートは放棄するのか?」との疑問が出てくる。放棄なら放棄で構わないが、それならそれで日本の安倍首相が、ISの誰と話を着ければいいのか指定しなければならないはずだ。

後藤氏の妻との交渉が、従来のISによる外国人誘拐の流れに乗っていたのに対して、この2億ドル要求は、金額が大きくなっただけではなく、日本の中東政策批判という政治的メッセージを絡めている。つまり、犯行の主旨が変化しているのだ。犯行の主旨が変わったということは、IS側の交渉責任者、後藤・湯川両氏の処遇を決める決定権者が変わった可能性だってある。だからこそ、交渉窓口について再確認が要るのだ。

さらに、世界中が閲覧できる動画で、ISは大々的に2億ドルという身代金を要求した訳だが、これは「2億ドルからびた一文まける気はない」という意思表示と解釈しなければならないのか、との疑問を生む。

仮に日本側が交渉を持った場合、後藤氏の妻との間で20億円で話を進めていたことを持ち出さない訳にはいかない。身代金誘拐にだって“相場”というのは存在するわけで、身代金の値下げ交渉は回避できないのだ。ところが、ISは、2億ドルという金額を世界に公表してしまった。ISが、交渉の破談を恐れて値下げした身代金を受け取るようなことになれば、日本に譲歩した弱腰と陰口を叩かれるだろう。

ISが行った、動画による身代金2億ドルの要求は、実にセンセーショナルであった。しかし、よくよく考えると身代金誘拐としては詰んでる動画に見えてくるのである。

身代金誘拐とは“取引”であり、交渉抜きには進まない犯罪
身代金誘拐とは、「人質を取ったぞ、返して欲しければカネを出せ」と言うだけでは完結しない類の犯罪である。

カネはどうやって払うのか? 現金受け渡しか、銀行送金か? 銀行送金は可能なのか? 現金なら円か、ドルか、むしろ金塊が希望だったりするのか? 現金の受け渡しの時機と場所は? 人質の引き渡し時機と場所は? ちゃんと人質は生きているのか? と多くの確認項目がある煩雑な“取引”なのだ。

誘拐犯はカネを取り損ねたくないし、誘拐被害者も多額のカネを払うからには確実に人質を取り戻したい。

確実な“取引”を実現するには、犯罪の加害者と被害者という関係ではあるものの、両者の間で一定の“取引相手としての信頼関係”を築く必要がある。お互いに言った言わないで揉めることなく、“取引”を円滑に進める為にも、一本化した交渉窓口で連絡を取り合うのは基本である。決して、動画なんかで、一方的に身代金を要求すれば進んでいく話ではない。双方向で、お互いに齟齬を生まない努力をした交渉が要るのだ。

身代金誘拐犯にとって、カネを取れずに人質を殺害する結末は、死体を増やしただけで何の利益にもならない。あくまでカネを取るための手段として人質を誘拐したのであり、人質とカネを交換する“取引”こそが達成すべき目的である。

2億ドルの“取引”をまとめる意欲を見せないIS
増して、今回の要求額は2億ドル(約236億円)である。2ドルを置くのではなく、100ドル札ならアタッシュケースにして200個分にもなる大金の“取引”である。ISは、年間で最大700億円の原油収入を得ていたと見られるが、その金額と比べてみても万全に万全を期すべき“取引”であるはずだ。

その“取引”に臨んだ日本政府は、あらゆるチャンネルを使ってISに呼び掛けをしたと言っている。いやいや、その状態はすでに異常である。お互いに交渉のパイプを特定できていないなど、およそ、2億ドルの“取引”をする体裁ではない。

日本がISとの間に交渉のパイプを持たないことは、IS側だって最初から自覚しているはずだ。だからこそ、真剣に2億ドルを取るつもりなら、双方で交渉窓口を決めることから手を着けるのが自然であろう。にも関わらず、ISがやったことは、動画を上げた後は72時間の期限切れを待つだけだったのだ。

人質となった二人が何処にいるかも掴めない日本が、ISで後藤・湯川両氏の処遇について決定権を持つ幹部に辿り着くよりも、IS幹部がヨルダンに派遣されてきた日本の中山外務副大臣に接触する方が、日本の外務省や首相官邸へ電話を入れる方が、はるかに容易なはずだ。容易であるはずなのにやらなかったのである。

このISが見せた、2億ドルの“取引”をまとめる意欲の低さこそ、この事件の肝心なところであったと思われる。

2億ドル要求動画は、日本の責任で交渉を決裂させる仕掛け
2億ドルに対する、このISの低い意欲の理由は何か?

それは、ISに端から2億ドルの“取引”をまとめる気がないと考えると説明がつく。

2億ドルという数字に大きな意味はなく、日本が「払う」と即答できない大金で、理由をこじつけられる金額であれば幾らでも良かったのだ。もし、安倍首相が10億ドル拠出すると言っていたなら、ISの要求額は10億ドルになっていただろうし、日本の拠出額が小さければ10倍にした金額をふっかけるなどしただろう。

このように考えてみると、72時間という支払期限の意味合いも変わってくる。後藤氏の身代金交渉において、日本政府は「テロリストとは交渉しない」の一点張りで、身代金を払うとも払わないとも言わなかった。金額を2億ドルにしても同様の流れになることは、容易に想像できる。だから、支払期限という交渉の終わりを作る必要があったのだ。

つまり、ISがやりたかったのは、日本政府との人質解放交渉を終わらせることだったのだ。それも、日本政府の責任となる形で決裂させるのが望ましい。ISは、「人質の交換条件に身代金2億ドルを日本政府に要求したが、日本政府が支払いを容認しないまま期限の72時間を経過し、人質解放交渉は日本政府のせいで決裂した。だから人質を殺す」というシナリオが欲しかったのである。

もちろん、間違って日本政府が2億ドルを支払おうとも、ISにとっては何も問題ない。

ISと交渉のパイプを持てない、後藤・湯川両氏が何処に居るかも特定できない。そんな八方塞がりの日本が二人を救うには、安倍首相が会見などで「2億ドルを支払うことにした。人質を返して欲しい」と言うぐらいしか手立ては無かっただろう。

しかし、安部首相にその選択肢は無かったと思う。テロに屈しない強いリーダーであることを選び、2億ドルを払うとは言わなかった。仮に払ってしまえば、有志連合によるISへの空爆も、地上戦でISと戦うクルド人やイラク治安部隊の兵士たちが流した血も、すべて無駄にしてしまうからだ。

(続く)
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鮎滝 渉

Author:鮎滝 渉
千秋真一に23%似ているらしいブロガーです。
実家である愛知県に戻ってきました。
ほぼ日刊で更新中。日々の巡回サイトに加えてやってください。
-------------------------
ブロガー名を、「鮎滝 渉」へ改めました。
私が自分に付けた最初のペンネーム。そして、「一角の者になるまでは使うまい」と思ってた名でもあります。

大して公知のペンネームというわけでもありません。が、1回目の中小企業診断士試験の失敗以降、あれこれと思い悩む中、「“輝かしい名としようする執着”はかえって醜い。そろそろ、この名を名乗る覚悟をしよう」と決意。鮎滝の名を使うことにしました。

ちなみに、旧ブロガー名は「スクナビコナ」。
日本神話に出てくる知恵の神様の名前です。恐れ多い名前ですが、ブログをする気構えとして、使っておりました。

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