年金積立金 5年ぶりに運用赤字計上・過去最大5兆円以上
公的年金積立金の2007年、単年度運用実績が5兆円以上の赤字に転じたことが3日、明らかになりました。
単年度赤字は02年度以来5年ぶりで、赤字額は過去最大額。米国の低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」問題による世界的な株価下落や円高の進行が影響し、運用利回りがマイナス約6%に落ち込んだため赤字転落となりました。
07年度は、第1四半期(4〜6月)こそ2兆3752億円の黒字でした。しかし、サブプライムローン問題が表面化して以降、第2、第3四半期でそれぞれ1兆6328億円、1兆5348億円の赤字となり、第4四半期でさらに赤字幅が拡大。結局、単年度で5兆円以上の赤字を計上することになりました。
積立金の運用主体は「年金積立金管理運用独立行政法人」。厚生労働相から委託を受けて、厚生年金と国民年金を合わせた積立金約150兆円のうち、現在約90兆円を市場で運用しています。運用方法は、約6割が国内債券、約3割が国内・外国株式となっています。
今回、株式市場の低迷を受けた巨額の赤字が明らかになったことで、リスクの高い株式の比重を増やすことへの慎重論と、組織強化を求める積極論の双方が強まることが予想されます。06年度末までで累積黒字13兆円 年金財政全体への影響は少ない?「年金積立金管理運用独立行政法人」による運用益の一部は、年金給付に回るしくみになっています。
07年度単年度は赤字となりましたが、06年度末までは黒字を累積できています。そのため、今回の赤字を引いても7兆円程度の黒字があるため、同法人関係者は「今のところ、年金財政全体に大きな影響は与えない」としています。同法人は、07年度実績をの詳細を4日に公表する予定。
運用収支で5兆円、7兆円、運用資金で90兆円という数字が踊っている同法人にとっては、影響は少なく見えるのでしょう。
しかし、資金運用を「マネーゲーム」にしてしまわないため、こういう時は金銭感覚の修正をしなければなりません。「5兆円以上の赤字を吸収して、7兆円の黒字が残る」という話は、より現実味が出るよう数字を6ケタ分落として考える必要があります。
今回、「年金積立金管理運用独立行政法人」がやったことは、「07年度に500万円以上の赤字を出したものの、これまで貯めてきた1,300万円の貯金で穴埋め。運用収支を結局、700万円にしました」という話です。「1,300万円あった貯金が700万円に減った」「13兆円あった貯金が7兆円に減った」のは、小さな話でしょうか?
資金運用をする以上、運用のプロを育成・雇用すべき公的年金積立金の運用をめぐっては、これまで「年金給付に回す額を増やそう」と、より高い利回りと運用益確保を目指す声が相次いでいました。株式での運用割合の引き上げや、「年金積立金管理運用独立行政法人」の組織体制見直しによる運用能力の強化などが、その代表的な意見です。
いま同法人が行なっている資金運用は約6割が国内債券、約3割が国内・外国株式で、原油や穀物先物取引に投機していないようですから投資家倫理としては悪くありません。
しかし、株式に限ってもロンドン市場などは運用益を出せる状態ですし、事業一つひとつへ貸付を行なう事業融資という方法だってあります。
「年金積立金管理運用独立行政法人」が運用している資金・90兆円は、国民から預かっているお金です。
同法人は、もっと資金運用のプロ育成・雇用を真剣に捉え、「世界同時株安の中、何とか赤字幅を1兆円に止めました」というような報告ができるよう、より広いリスク分散・最適投資を考えられる体制作りを目指すべきではないでしょうか?