サリドマイドが「血液ガン治療薬」として再承認へ
27日、胎児に障害を起こし販売中止となった催眠鎮静薬「サリドマイド ※」について、血液がんの一つ「多発性骨髄腫」治療薬として、厚生労働省薬事・食品衛生審議会の医薬品部会が承認することを了承しました。厚労省はこの結論を上部の同審議会薬事分科会にはかる一方、承認を前提に安全管理対策などを検討する方針です。
承認されれば、1962年の販売中止以来四十数年ぶりの復活となります。
※サリドマイド・・・ドイツで催眠鎮静薬として開発され、日本では1958年から販売されました。その催眠作用を利用して妊婦のつわりや不眠症を改善するために服用されましたが、生まれた子の手足や聴覚に重い障害が残ったり、死産が相次いだため62年に販売中止。世界で数千人の被害者を出し、国内の認定被害者も309人に上りました。
その後、被害者が国と製薬会社を相手取って提訴。同裁判は74年に和解し、国は被害再発防止を約束しています。藤本製薬が、サリドマイドを「血液ガン治療薬」として申請サリドマイドは、藤本製薬(大阪府松原市)が06年8月、多発性骨髄腫治療薬として製造販売の承認を厚労省に申請していました。
これはサリドマイドが持つ「血管新生阻害作用」を、ガン治療に使おうというものです。
新しく毛細血管が形成されるのを阻害する作用は、胎児では手足の毛細血管の成長をさまたげて奇形を発生させる原因となります。しかしこの作用を、ガン組織が成長する過程で形成する毛細血管の成長を阻害として働かせることができれば、ガンの治療につながると考えられています。
ガン治療におけるサリドマイドの有効性は90年代、ガンの一種である「多発性骨髄腫」への延命効果が報告され、これまでに米国など17カ国で承認されています。日本では未承認のまま医師が個人輸入で治療に使うケースが増えており、患者団体が承認を求めていました。
安全管理基準策定を条件に、「血液がん治療薬」として再承認へ8月27日の部会では、医薬品医療機器総合機構が2年間の審査の結果を報告。それを基に議論した結果、
(1)安全管理の適正な実施
(2)患者への文書による説明と同意取得
(3)全症例を対象にした使用成績調査と販売後の安全性・有効性に関するデータ収集
を条件に、「承認は差し支えない」という結論に達しました。
藤本製薬は、サリドマイドの被害者団体などの要望に沿って、再発防止のための「安全管理基準案」を作成。サリドマイドを使う患者や医師、薬剤師を登録制にして処方や流通を厳格にし、患者に妊娠を回避するよう情報提供することを盛り込みました。厚労省は承認に向けた手続きと並行して、この基準作りも進めます。
日本骨髄腫患者の会の上甲恭子副代表は「やっとここまで来たという思いだ。藤本製薬が作成した安全管理基準を基に、一日も早くサリドマイドの安全使用に関する管理システムを完成させ、運用を始めてほしい」と話しました。
一方、サリドマイド被害者団体「いしずえ」の佐藤嗣道理事長は「体が引き裂かれる思いだが、一方で健康を大事に思う身として、患者さんの治療に役立ってほしい」と語っています。
各国におけるサリドマイドの扱いサリドマイドによる健康被害は60年代の日本で起きたように、同時期のイギリスで201人、カナダで115人、スウェーデンで107人、台湾で88人と、世界各国で報告されています。全世界での被害者は、死産も含めて約5,800人に上ったと見られています。
こうした被害を受けて、各国でサリドマイドの回収・販売中止措置がとられました。
しかしその後も、サリドマイドの研究は続けられており、ガン治療のほか、ハンセン病特有の皮膚症状の改善、糖尿病性網膜症と黄斑変性症の予防、エイズウイルスの増殖抑制があるとされています。実際、ハンセン病患者への投与については、アメリカ合衆国やブラジルなどで承認が下りています。
ですが、ガン治療での使用はまだ臨床試験の段階であり、投与すれば必ず治る特効薬としての効果までは認められていません。「サリドマイドで、ガン患者の寿命が延びた」と証明されているケースも限られています。
よって、日本で承認が下りたとしても、その効用については継続的に検証を重ねる必要があると思われます。