ノーベル化学賞に下村脩氏、クラゲから「蛍光タンパク」
スウェーデン王立科学アカデミーは8日、2008年のノーベル化学賞を、下村脩・米ボストン大名誉教授ら3氏に贈ることを発表しました。
下村氏は発光するクラゲの体内から、緑色に光る蛍光タンパク質を世界で初めて発見し、精製することに成功。これを目印に使うことで、生きた細胞中におけるタンパク質の動きが直接観察できるようになり、生命科学の研究に飛躍的な発展をもたらした点が評価されました。
日本人3人が受賞した7日の物理学賞に続く快挙で、日本人受賞者は計16人になります。下村脩氏 今日の生命科学に不可欠の「蛍光タンパク」を発見下村氏のノーベル賞授賞理由は、「緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と開発」。共同受賞したのは、米コロンビア大のマーチン・シャルフィー教授と、米カリフォルニア大サンディエゴ校のロジャー・チェン教授。
下村氏は1962年、米国シアトル近郊のワシントン大臨海実験所で、オワンクラゲの体内から、紫外線が当たると緑色に光るタンパク質(GFP)を発見。タンパク質は、酵素など別の物質の助けがなければ光らないという当時の常識を覆す革新的な成果でした。
生物の体内には何万種類ものタンパク質が存在します。そのため、ガン細胞特有のタンパク質など、細胞内において特定のタンパク質の動きを観察することは困難なことでした。3氏が確立した技術のおかげで、特定のタンパク質にGFPなどで印をつけ、細胞を壊すことなく、タンパク質の動きを追うことができるようになりました。
現在、3氏が確立した技術を使った論文は年間1000本以上発表され、生命科学の探究に不可欠な「道具」となっています。アルツハイマー病の発症やガンの転移のメカニズムの解明など医療の研究にも役立てられています。
ノーベル賞受賞4氏の略歴◇ノーベル化学賞・下村脩氏1928年8月27日、京都府生まれ。長崎医科大付属薬学専門部(現、長崎大薬学部)卒。
名古屋大学で博士号を取得し、60年に
フルブライト留学生として米国プリンストン大学へ。61年、ワシントン大学フライデーハーバー研究所滞在中に、緑色に光る「蛍光タンパク質」を発見。
63年に名古屋大助教授。
その後、米国プリンストン大学へ戻り、82年~01年まで米国ウッズホール海洋生物学研究所上席研究員。01年に同研究所を退職後は、マサチューセッツ州の自宅で研究を続けています。
◇ノーベル物理学賞・南部陽一郎氏1921年1月18日、東京都生まれ。旧制一高を経て東京大学理学部物理学科卒。
50年から56年まで大阪市立大学教授。
56年に米国シカゴ大学に招かれ、58年に同大学教授、91年から同大学名誉教授。70年に米国国籍を取得し、現在もシカゴに住んでおられます。
◇ノーベル物理学賞・小林誠氏1944年4月7日、名古屋市生まれ。県立明和高校を経て名古屋大学理学部物理学入学。故・坂田昌一教授の研究室に入り、同大学大学院で博士号を取得。72年に京都大学物理学助手。
73年に益川氏とともに小林・益川理論を提唱。
79年高エネルギー物理学研究所(現・高エネルギー加速器研究機構)で助教授、85年から教授。03年に同機構の素粒子原子核研究所所長となり、06年から同機構名誉教授。
◇ノーベル物理学賞・益川敏英氏1940年2月7日、名古屋市生まれ。市立向陽高校を経て名古屋大学理学部物理学入学。故・坂田昌一教授の研究室に入り、同大学大学院で博士号を取得。
名古屋大学、京都大学助手、東京大学原子核研究所助教授を経て、80年に京都大学基礎物理学研究所教授。90年から京都大学理学部教授、97年から03年まで起訴物理学研究所所長。同年4月から京都産業大学教授、京都大学名誉教授。
ノーベル賞受賞者に見る深刻な「日本の頭脳流出」下村氏は、留学後に一度、日本へ戻ってこられたにもかかわらず再び渡米。そのまま米国での研究生活を続けられています。南部氏は、米国シカゴ大学に招かれ以降、米国で実績を積まれて米国籍まで取得されました。
もっとも、この両氏の渡米をもって「頭脳流出」といっても、小林氏と益川氏は日本に止まられています。「これなら、2対2だ」と言われると、確かにそうです。
しかしそこには、ご本人が認めておられるほど、益川氏が大の外国語嫌いであるという要素を加味しなければなりません。もし益川氏が外国語嫌いでなければ、欧州合同原子核研究所がスイス・フランス国境に建設した「大型ハドロン衝突型加速器」の計画に参加されていたかもしれません。
頭脳流出という問題では、小林氏と益川氏が日本に居続けられたのは、「たまたまそうなった」というレベルで捉えた方がよいでしょう。

(↑大きい画像が開きます)上のグラフは、GDP(国内総生産)に占める学校教育費に対する公財政支出の国際比較です。
日本は3.5%ですが、これはOECD加盟国の平均値5.1%と比べて著しく低い値です。米国は、ハーバード大学やイェール大学、プリンストン大学といった有名大学が私立校でありながら、GDPに対する公財政支出の割合は5.3%。ちなみに英国は5.0%、フランスは5.7%、ドイツは4.4%、韓国は4.2%となっています。
教育への支出が低いということは、それだけ「教える側の人材」を多く抱え難いこと、産業への応用から遠い「基礎研究分野の研究者」の活躍の場が少ないことを意味します。技術立国を本気で目指すなら、将来の日本を支える人材教育、将来の日本を支える基礎研究に、もっと資金をあてるべきではないでしょうか?